ハクビシン ケースメソッド 50問
状況を読み、飼い主として「最初に取るべき行動」を4択から選んでください。回答後に解説・課題・改善案が表示されます。マニュアルを見る
解答と解説・課題と改善案(全50問)
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Q1収容個体の顔に厚いかさぶたと脱毛病気
11月の朝、保護施設で1週間前に収容した成獣のハクビシンを見ると、顔と前足に厚い灰色のかさぶたが広がり、毛が抜けて絶えず体を掻いている。隣のケージには別の収容個体が2頭いる。担当者は今朝、素手でケージの扉を開けて餌皿を交換したばかりだ。
この状況でまず取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 人用のかゆみ止め軟膏を患部に塗り、数日様子を見る
- 毛が生え変わる時期なので正常と判断し、通常どおり世話を続ける
- 疥癬を疑い手袋・長袖で別室に隔離し、触れた物を消毒して当日中に獣医師へ
- ケージごと水で丸洗いして清潔にし、同じ部屋で観察を続ける
正解C.疥癬を疑い手袋・長袖で別室に隔離し、触れた物を消毒して当日中に獣医師へ
解説厚いかさぶた・脱毛・激しいかゆみはハクビシンの疥癬(ヒゼンダニ)の典型で、他の個体にも人にもうつる。まず隔離し、素手で触れた扉や餌皿を消毒し、当日中に獣医師の診断と駆虫を受ける。人用軟膏はダニを殺せず、塗るために触ること自体が感染機会になる。換毛と決めつけると施設内に広がる。丸洗いは個体を濡らしストレスと低体温を招くうえ、同室のままでは隔離にならない。
課題素手で餌皿を交換していたことが最大の問題で、施設の防護ルールが守られていなかった。収容時の皮膚チェックと隔離観察期間が設けられておらず、複数個体が同室という配置も感染拡大のリスクだった。
改善案収容個体は最低2週間は別室で隔離観察し、皮膚・便・体重を毎日記録する。作業は必ず手袋と専用長袖で行い、個体ごとに器具を分ける。かゆみや脱毛を見たら当日受診を施設ルールに明記し、人の皮膚症状も報告させる。
Q2昼間の公園で人を怖がらないハクビシン病気
7月の正午、住宅地の公園で、鼻筋に白い線のある動物が草地をふらふら歩いている。人が近づいても逃げず、目やにと鼻水で顔が汚れ、時々首をかしげてよろける。通りかかった住民が「かわいそうだから家で看病したい」と段ボールを持ってきた。
この住民に勧めるべき行動として最も適切なものはどれか
- 触らず距離を取り、都道府県の鳥獣担当窓口か市役所に連絡して指示を待つ
- 段ボールに入れて自宅に連れ帰り、餌と水を与えて元気になるまで看病する
- 写真を撮って動物病院に持ち込み、治療後に自分で飼育する
- 飼い犬を連れてきて追い払い、山の方へ逃がす
正解A.触らず距離を取り、都道府県の鳥獣担当窓口か市役所に連絡して指示を待つ
解説昼間に人を恐れず徘徊し、目やに・鼻水・神経症状がある個体はジステンパー等の感染症が疑われる。ハクビシンは鳥獣保護管理法の対象で、無許可の捕獲・飼養は違法であり、まず都道府県や市の鳥獣担当に連絡して指示を受けるのが正しい。自宅へ持ち帰ると違法なうえ咬傷や感染症の危険がある。病院に持ち込んでも飼育はできない。犬を近づければジステンパーが犬にうつるおそれがあり、追い払っても病気の個体が住宅地を移動するだけである。
課題善意の住民が法規制を知らず、野生動物を拾って飼えると思い込んでいた点が問題。病気の個体は見た目で判断できず、咬傷と人獣共通感染症の危険が住民に認識されていなかった。
改善案地域に「野生動物を見つけたら触らず自治体へ」の周知を進め、連絡先を掲示する。施設側は通報を受けたら到着まで住民に距離を保たせ、犬や子どもを近づけないよう伝える。収容後はジステンパーを念頭に隔離し獣医師の診断を受ける。
Q3道路脇で動けないハクビシン怪我
10月の夜10時、郊外の県道で車にはねられたらしいハクビシンが路肩でうずくまっている。後ろ足を引きずり、口元に血がついているが、近づくと歯をむいてうなる。許可飼養者であるあなたは車に厚手の革手袋・毛布・段ボール箱を積んでいる。
収容にあたり最も適切な手順はどれか
- 素手で抱き上げて助手席に乗せ、急いで病院へ向かう
- 革手袋と毛布で頭を覆って箱に入れ、箱を暗くして動かさず都道府県に連絡し獣医師へ
- 痛がっているので後ろ足を伸ばして副木を当ててから箱に入れる
- うなっているうちは元気なので、そのまま置いて翌朝確認に来る
正解B.革手袋と毛布で頭を覆って箱に入れ、箱を暗くして動かさず都道府県に連絡し獣医師へ
解説交通事故個体は骨折や内出血があると考えて扱う。毛布で視界を遮り革手袋で収容し、暗く狭い箱で動かさないのが基本で、保護は都道府県へ連絡し獣医師の診察を受ける。素手で抱けば激しく咬まれ、車内で暴れて二重事故になる。副木は暴れる野生動物では固定できず骨折部を悪化させ、咬傷の危険も高い。うなるのは恐怖の表れで元気の指標ではなく、放置すれば夜間に車にひかれ死亡する。
課題交通事故個体は見た目以上に重症なことが多いのに、動けるかどうかで軽重を判断しがちだった。野生動物の防御行動(うなる・咬む)を理解しないまま近づくと、人も動物も危険になる。
改善案車に革手袋・毛布・段ボール・懐中電灯を常備し、収容は視界遮断と最小限の接触で行う。都道府県の夜間連絡先と対応可能な動物病院を事前に確認し、搬送中は暗く静かに保つ。口元の出血は内臓損傷の可能性として獣医師に伝える。
Q4掃除中に二重扉を開けたら逃げた事故
5月の夕方、許可飼養施設で2年飼養している成獣の掃除中、前室の外扉を閉め忘れたまま内扉を開けた。個体は足元をすり抜け前室から外へ出て、庭の柿の木に登った。木の先は隣家の屋根につながっている。庭には脚立も捕獲器もなく、職員は一人で、手元には革手袋と好物のバナナがある。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 木に登って捕まえようと追いかける
- 好物の果物を持って大声で名前を呼びながら近づく
- 近所の人に頼んで棒で木を揺らし落として捕まえる
- 追わず動きを目で追って居場所を記録し、都道府県に連絡して捕獲器の指示を受ける
正解D.追わず動きを目で追って居場所を記録し、都道府県に連絡して捕獲器の指示を受ける
解説ハクビシンは登攀力が高く追えば追うほど遠くへ逃げ、人の方が落下や咬傷で負傷する。逸走したら追わず、居場所を見失わないよう記録し、都道府県に連絡して捕獲器や捕獲方法の指示を受ける。許可飼養個体でも捕獲器の使用は許可の範囲に従う必要がある。大声は個体を驚かせ隣家の屋根裏へ逃げ込ませる。木を揺らして落とせば骨折し、落ちた個体が人を咬む。登って捕まえる行為も転落事故の元である。
課題二重扉の運用ルールが徹底されず、外扉を閉め忘れたまま内扉を開けた点が直接の原因。逃げた先が隣家の屋根裏につながる環境で、施設周辺の樹木管理が不十分だった。
改善案前室は外扉を閉め施錠を確認してから内扉を開ける手順を掲示し、指差し確認を義務づける。施設周囲の樹木は屋根や塀と離れるよう剪定する。逸走時の連絡先と捕獲手順を文書化し、近隣への説明も想定しておく。
Q5餌皿を替えるとき手を咬まれた感染症・衛生
3月の夜、保護施設の職員が薄手の軍手で餌皿を交換中、暗がりから出てきたハクビシンに右手の親指を咬まれた。手を引くと犬歯が深く食い込んでいたが、個体はすぐ離れて寝箱に戻った。指から血が流れ、傷は深い。個体は興奮しており、ケージの奥から歯を見せてうなっている。
引き離した後の対応として最も適切なものはどれか
- 傷口を消毒液で軽く拭き絆創膏を貼り、仕事を続ける
- 流水で5分以上洗い、当日中に受診して破傷風と抗菌薬を相談する
- 傷口を強く絞って血を出し切り、自然に治るのを待つ
- 個体を叩いて二度と咬まないようしつけてから手当てする
正解B.流水で5分以上洗い、当日中に受診して破傷風と抗菌薬を相談する
解説野生動物の咬傷は口腔内細菌による感染症の危険が高く、犬歯の深い傷は洗浄が届きにくい。流水で5分以上洗い流し、当日中に受診して破傷風の予防接種歴と抗菌薬を相談する。消毒液で拭くだけでは深部の細菌を除けず、腫れや発熱に進みやすい。絞り出しは組織を傷め、感染予防にはならない。しつけは野生動物に効かず、恐怖で攻撃性が増し職員の危険を増やすだけである。
課題薄手の軍手では犬歯を防げず、防護具の選択を誤っていた。暗い時間帯に個体の位置を確認せず手を入れた作業手順と、咬傷後の受診基準が施設で共有されていなかった点が問題。
改善案作業は厚手の革手袋と長袖で行い、扉を開ける前に個体の居場所を確認する。給餌は個体が寝箱にいる時間帯に行い、餌皿は扉の外から差し込める構造にする。咬傷時は洗浄と当日受診を施設の手順書に明記し、職員の破傷風接種歴を把握する。
Q6収容3日目に血の混じった下痢病気
9月の朝、収容3日目の若い個体のケージ床に、粘液と血の混じった水様便が広がっていた。本人は寝箱の奥でじっとしており、昨夜置いた水はほとんど減っていない。体を触ると皮膚をつまんだ跡が戻りにくい。ケージの隣では別の個体を世話する予定で、素手で床を拭こうとしていた。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 便を密閉容器に採り写真も撮り、保温して即受診する
- 人用の下痢止めを果物に混ぜて与え、便が固まるまで待つ
- 絶食させれば腸が休まるので、1日餌も水も抜く
- 寄生虫だろうと判断し市販の犬用駆虫薬を与える
正解A.便を密閉容器に採り写真も撮り、保温して即受診する
解説血便に加えて飲水できず、皮膚のつまみ跡が戻りにくいのは脱水のサインで、若い個体は急速に悪化する。マニュアルどおり便を採って写真も撮り、保温してすぐ受診する。水を飲めない時点で「半日以内」ではなく即受診が必要である。人用の下痢止めは感染性腸炎で病原体を腸内にとどめ、量も不明で危険。絶食に加えて水まで抜けば脱水が致命的になる。寄生虫と決めつけて犬用駆虫薬を使うのは種も量も不適切で、診断の機会を失う。
課題収容直後の検便が行われておらず、下痢の原因が不明のまま時間が経った。若い個体は体重が軽く脱水に弱いという認識が薄く、飲水量を記録していなかったため、悪化の兆候を見逃していた。
改善案収容初日に体重測定と検便を行い、獣医師の駆虫を受ける。水と餌の減り具合を毎日記録し、飲水ゼロや血便は即受診と基準化する。便の採取容器と写真記録のルールを決め、受診時に見せられるようにする。
Q7見学者がチョコレートを投げ入れた中毒・誤飲
12月の午後、保護施設の見学中に小学生がポケットの板チョコ半分をケージに投げ入れ、ハクビシンがすぐ食べてしまった。体重は約4kg。今のところ元気そうに見えるが、職員は何が起きるか不安で動物病院に電話すべきか迷っている。
最も適切な対応はどれか
- 量が少ないので何もせず、症状が出たら受診する
- 牛乳を飲ませて毒を薄め、吐くまで塩水を与える
- 食べた量と時刻を記録し、すぐ動物病院に連絡して指示を受ける
- ケージ内で走らせて運動させ、早く代謝させる
正解C.食べた量と時刻を記録し、すぐ動物病院に連絡して指示を受ける
解説チョコレートの成分はハクビシンにも有害で、症状が出てからでは処置が遅れる。摂取した種類・量・時刻を記録して直ちに動物病院に連絡し、獣医師の判断で催吐や処置を受けるのが正しい。症状が出るまで待てば嘔吐・興奮・けいれんに進んでからの対応になる。塩水で吐かせるのは塩中毒を起こし、野生動物では咬傷の危険もある。牛乳は毒を薄めず、運動は吸収と興奮を進めるだけである。
課題見学者が食べ物を持ったままケージに近づける動線で、投げ込みを防ぐ柵や距離が足りなかった。職員が中毒時の初動(記録して即連絡)を知らず、判断に迷った点も問題。
改善案ケージ前に二重柵を設け、見学者には食べ物の持ち込み禁止を入口で説明する。中毒時は「何をどれだけ何時に」を記録し即連絡という手順を掲示し、動物病院の連絡先を見える場所に貼る。見学者向けに与えてはいけない物を掲示する。
Q8寝箱の中でぐったりして呼吸がない救命救急
2月の朝、保護施設で前日から食欲が落ちていた老齢個体を見ると、寝箱の中で横たわり、箱を叩いても反応せず胸が動いていない。歯茎は紫色。獣医師には電話がつながり「すぐ連れてきて」と言われた。職員は2人、革手袋とキャリーがある。
搬送までの行動として最も適切なものはどれか
- 口に直接口をつけて人工呼吸を繰り返す
- 胸を強く叩いて刺激し、目を覚ますのを待つ
- 死んだと判断し、そのまま箱ごと病院へ運ぶ
- 手袋をして横に寝かせ首を伸ばし口鼻を拭き、胸の側面を圧迫しながら搬送する
正解D.手袋をして横に寝かせ首を伸ばし口鼻を拭き、胸の側面を圧迫しながら搬送する
解説反応がなく呼吸が止まり歯茎が紫なら心肺停止に近い状態で、マニュアルどおり手袋を着け、横に寝かせ首を伸ばして気道を確保し、口鼻の分泌物を拭き、肋骨の後ろ胸の側面を片手で1分100回程度圧迫しながら搬送する。意識が戻れば咬むため手袋は必須。口を直接つける人工呼吸はSARS関連コロナなど感染症の危険があり、布越しに鼻から吹き込む。胸を叩く刺激は蘇生にならない。死亡の判断は獣医師が行うもので、処置なしで運べば助かる可能性を捨てることになる。
課題前日の食欲低下の時点で老齢個体の急変を想定せず受診を遅らせた。心肺蘇生の手順と防護具の使い方を職員が事前に訓練しておらず、現場で迷う時間が生じた。
改善案老齢個体や食欲低下個体は当日中に獣医師へ相談する基準を設ける。心肺蘇生の手順(気道確保・側面圧迫・布越しの送気)を手順書と写真で掲示し、年1回訓練する。手袋・布・キャリーを1か所にまとめた救急セットを用意する。
Q9真夏の午後、口を開けて荒い呼吸環境・災害
8月の午後2時、屋外飼養施設の気温は35℃。寝箱から出てきたハクビシンが床に伏せ、口を開けて速い呼吸をし、よだれが垂れている。金属製の寝箱は西日が直接当たっている。水皿は倒れて空になっていた。他に職員はおらず、ホースと扇風機、日陰の小屋はすぐ使える状態にある。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 氷水をバケツで全身にかけ、一気に体温を下げる
- 日陰に移して体にぬるい水をかけ扇風機で風を送り、水を置いて動物病院に連絡する
- 寝箱に戻して休ませ、夕方涼しくなってから様子を見る
- 好物の冷たい果物を与えて元気になるか確認する
正解B.日陰に移して体にぬるい水をかけ扇風機で風を送り、水を置いて動物病院に連絡する
解説開口呼吸とよだれは熱中症の危険信号で、放置すれば臓器障害に進む。まず日陰に移し、ぬるい水で体を濡らして風を当て、飲める水を置いたうえで動物病院に連絡し受診する。氷水で急激に冷やすと血管が収縮して熱が体内にこもり、ショックを起こす。西日の当たる金属箱に戻せば悪化し、夕方まで待つのは致命的。果物で水分を取らせるのは補助にはなるが、冷却と連絡より優先すべきではない。
課題金属製の寝箱に西日が当たる配置と、倒れやすい水皿が原因で、猛暑日の管理体制が不足していた。30℃を超える日は日よけと通風が必要というマニュアルの基準が守られていなかった。
改善案寝箱は木製にして日陰に固定し、夏は日よけシートと通風を確保する。水皿は床に固定した重い陶器にし2か所以上置き、凍らせたペットボトルも入れる。猛暑日は午後に必ず巡回し、開口呼吸を見たら冷却と連絡という手順を掲示する。
Q10脚にワイヤーが食い込んだ個体怪我
4月の早朝、許可を受けた農家から「くくり罠にハクビシンがかかった」と連絡があり、施設職員が向かうと、左前足にワイヤーが深く食い込み、足先が冷たく紫色になっている。個体は暴れてワイヤーをさらに締めている。
この状況で最も適切な対応はどれか
- 布で目を覆って暴れを止め、ワイヤーは切らずにそのまま獣医師に運び、足先の冷えを伝える
- ペンチでワイヤーを切って足を自由にし、山へ放す
- 暴れているので落ち着くまで数時間放置してから回収する
- 足先が壊死しているので、その場で切り落とす
正解A.布で目を覆って暴れを止め、ワイヤーは切らずにそのまま獣医師に運び、足先の冷えを伝える
解説まず布で視界を遮り暴れを止め、締め付けを進ませないようにする。ワイヤーを現場で切ると食い込んだ部分が組織に残ったり、解放の瞬間に暴れて咬傷事故が起きる。足先の冷えと変色は血流障害の重要情報なので獣医師に伝えて処置を受ける。切って放せば壊死部を抱えたまま野外で死ぬ。数時間の放置は血流障害を不可逆にする。切断は獣医師以外が行ってはならず、法的にも倫理的にも許されない。
課題罠の見回りが遅れ、ワイヤーが締まり続ける時間が長くなった。錯誤捕獲や傷病個体が出たときの搬送手順と連絡先が、罠設置者と施設の間で共有されていなかった。
改善案罠は毎朝点検することを設置者に求め、錯誤捕獲時の連絡先を施設側から事前に渡しておく。視界遮断用の布・革手袋・搬送箱を持って出動する。締め付け部位より先の色と温度を観察して獣医師に伝える習慣をつける。
Q11好物の柿も食べない2日目病気
11月の夜、許可飼養2年目の成獣が2日続けて餌をほとんど残している。今夜も好物の柿を近づけたが、匂いを嗅いで顔を背ける。寝箱から出てくるが動きが鈍く、口の端によだれの跡がある。体重計は手元にある。体重は収容時より減っているように見え、歯茎の色は確認できていない。
最も適切な対応はどれか
- 食欲は波があるものなので、1週間様子を見る
- 無理やり口をこじ開けて果物を押し込む
- 体重を量り口元とよだれを記録し、2日食べていないので受診を予約する
- ネットで調べた野生動物向けのサプリを与えて数日待つ
正解C.体重を量り口元とよだれを記録し、2日食べていないので受診を予約する
解説ハクビシンの2日間の食欲不振は受診の基準で、よだれと動きの鈍さが伴えば歯周病・歯の破折や内臓疾患が疑われる。体重を測り口元の状態とよだれを記録し、受診を予約する。嘔吐が出れば即受診に切り替える。1週間の放置は衰弱を進め、野生動物は症状を隠すため気づいた時には重症になっている。口をこじ開けるのは咬傷の危険が高く、口腔の痛みを悪化させる。根拠不明のサプリは診断を遅らせるだけである。
課題食欲の変化を記録する習慣がなく、残し始めた時点で気づいていなかった。よだれという口腔疾患のサインを「食欲の波」と解釈し、受診の目安を知らなかった点が問題。
改善案毎日の給餌量と残量、体重を週1回記録し、2日間の食欲不振またはよだれで受診と基準化する。金網を噛めないよう噛む場所に木板を張り、硬すぎる骨を与えない。年1回は鎮静下の口腔チェックを獣医師と相談する。
Q12扉を閉めたら尾を挟んだ事故
6月の夕方、給餌後に内扉を閉めた瞬間、扉の隙間にハクビシンの尾が挟まり、悲鳴をあげて暴れた。すぐ扉を開けると個体は寝箱に逃げ込んだ。尾の付け根から10cmほどの所が腫れてきて、尾の先が垂れたままになっている。
この後の対応として最も適切なものはどれか
- すぐに尾をつかんで引っ張り、折れていないか確認する
- 腫れが引くまで寝箱の外に出して歩かせ、様子を見る
- 人用の湿布を尾に巻いて固定しておく
- 刺激せず静かにし、尾の腫れと動きを観察して当日中に受診する
正解D.刺激せず静かにし、尾の腫れと動きを観察して当日中に受診する
解説尾の腫れと先端が垂れた状態は骨折や脱臼の疑いで、ハクビシンは尾で平衡を取るため機能障害が残ると登攀に影響する。刺激せず静かにし、腫れ・変色・動きを観察して当日中に受診する。尾をつかんで引けば骨折部が悪化し、痛みで激しく咬まれる。歩かせるのは安静と逆で腫れを増やす。人用の湿布は成分をなめて中毒を起こし、野生動物に巻く行為自体が咬傷の危険である。
課題扉を閉める前に体の位置を確認する習慣がなかった。給餌直後は個体が扉付近に寄ってくることを予測しておらず、扉の構造も隙間が大きく尾を挟みやすかった。
改善案扉を閉める前に「尾・指の位置を確認」を指差し確認する手順にする。給餌は扉の外から差し込める餌口に変え、扉の開閉回数を減らす。扉の縁にクッション材を付け、挟んだ場合は当日受診と手順書に明記する。
Q13収容時に耳の裏に大きなマダニ感染症・衛生
5月の午後、農地で衰弱して保護されたハクビシンを施設で受け入れた。革手袋で保定して確認すると、耳の裏と首に血を吸って膨れたマダニが5匹以上ついている。職員は半袖で作業しており、保定した腕に小さなダニが歩いているのに気づいた。
最も適切な対応はどれか
- ダニは潰さずピンセットで根元からつまんで除去し、作業後に自分の体も点検して個体は隔離する
- 指でつまんで潰し、数が多いので殺虫スプレーを個体に直接かける
- ダニは自然に落ちるので放置し、翌日の清掃で床から回収する
- 個体を水で洗い流してダニを落とし、乾かさずケージに入れる
正解A.ダニは潰さずピンセットで根元からつまんで除去し、作業後に自分の体も点検して個体は隔離する
解説マダニは重い感染症を媒介し、人にも移動する。潰すと体液が出て感染リスクが上がるため、ピンセットで皮膚近くをつまんでゆっくり引き抜き、密閉して廃棄する。作業者は長袖に替え、作業後に自分の体を点検する。個体は隔離して獣医師に駆除薬を相談する。殺虫スプレーを直接かけるのは中毒と皮膚炎の原因になる。放置すれば吸血が続き、ダニが施設内に広がる。濡れたまま収容すれば衰弱個体は低体温になる。
課題半袖での収容作業は防護として不十分で、マダニが人に移る危険を軽視していた。収容時の体表チェックが手順に含まれておらず、ダニの持ち込みで施設全体が汚染するリスクがあった。
改善案収容作業は長袖・長ズボン・革手袋を標準とし、収容時に全身のダニ点検を手順化する。先細ピンセットと密閉容器を救急セットに入れる。ケージ周囲の草刈りを定期的に行い、作業者が後日発熱したら医療機関にダニ接触を伝えるよう周知する。
Q14夜のケージで突然けいれん病気
1月の深夜、巡回中の職員が、2週間前に収容した若い個体が床で横倒しになり、四肢を突っ張ってけいれんしているのを見つけた。口から泡が出ている。隣の部屋では施設の番犬が飼われており、職員は犬を連れて巡回していた。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- ケージに手を入れて体を押さえ、舌を噛まないよう口に指を入れる
- 犬を即座に別室へ離し、ケージを暗く静かにして手を入れず獣医師に即連絡する
- けいれんは数分で止まるので、撮影しながら終わるまで待つ
- 冷水をかけて意識を戻し、果物を食べさせて体力を回復させる
正解B.犬を即座に別室へ離し、ケージを暗く静かにして手を入れず獣医師に即連絡する
解説収容2週間の若い個体のけいれんはジステンパーを含む感染症の可能性が高く、犬に感染するおそれがあるため、まず犬を離す。けいれん中の個体には手を入れず、暗く静かにして獣医師に即連絡し指示を受ける。けいれん中に口に指を入れれば重い咬傷を負い、押さえつけは呼吸を妨げる。撮影は情報になるが、連絡と犬の分離より優先してはならない。冷水はショックを招き、意識が不明な個体に食べさせれば誤嚥する。
課題番犬を連れてハクビシンの収容室を巡回していたこと自体が感染管理の誤りで、犬とフェレットを接触させないという基本が守られていなかった。収容個体の隔離観察期間中の神経症状を想定した夜間連絡体制も不十分だった。
改善案犬や他の動物を収容室に入れない動線にし、靴底消毒と専用着を徹底する。収容個体は2週間以上隔離観察し、神経症状・目やに・鼻水を毎日記録する。夜間に連絡できる獣医師と連絡順を掲示し、けいれん時は手を入れないと手順書に明記する。
Q15金網を噛んで犬歯が折れた怪我
3月の朝、ケージの金網に血の跡があり、ハクビシンの口元を見ると上の犬歯が途中で折れ、断面にピンク色の点が見える。本人は固い干し芋を避け柔らかいバナナだけ食べている。出血はすでに止まっているように見える。
最も適切な対応はどれか
- 出血が止まったので何もせず、固い餌を与えて歯を強くする
- 折れた歯をヤスリで削って尖りを取る
- 硬い餌をやめて柔らかい餌にし、歯髄が露出しているため当日中に受診する
- 痛み止めとして人の鎮痛薬を餌に混ぜる
正解C.硬い餌をやめて柔らかい餌にし、歯髄が露出しているため当日中に受診する
解説折れた断面にピンク色の点が見えるのは歯髄の露出で、放置すると感染が根に広がり顔の腫れや激痛を起こす。硬い餌をやめて柔らかい餌に切り替え、当日中に獣医師の処置を受ける。固い餌を与えれば痛みで食べられなくなり、歯がさらに割れる。野生動物の歯をヤスリで削るのは保定が不可能で咬傷の危険があり、歯髄を刺激する。人の鎮痛薬は中毒を起こし、量も不明で与えてはならない。
課題金網を噛む行動が続いていたのに、ケージの構造やストレス要因を改善していなかった。歯の破折が歯髄露出を伴うと緊急性が高いという知識がなく、出血の有無だけで判断していた。
改善案噛む場所に木板を張るかパネル構造に替え、隠れ場所や探索遊びを増やしてストレスを減らす。毎朝の餌の食べ方観察で片側噛みやよだれをチェックし、歯の異常は当日受診と基準化する。年1回の口腔チェックを獣医師と計画する。
Q16厚意で届いた残飯に玉ねぎが中毒・誤飲
10月の朝、近所の人が「野菜の残り」と届けたバケツの中身を職員が確認せず給餌した。翌朝見ると、炒めた玉ねぎが混ざった残飯だったと分かり、個体は食べ尽くしていた。今朝の尿がやや赤茶色で、動きが鈍い。昨日の便は正常だったが、今朝は寝箱から出てこず水も減っていない。
最も適切な対応はどれか
- 玉ねぎは少量なら平気なので通常どおり世話を続ける
- 水をたくさん飲ませて尿で毒を流し、3日後に受診する
- 食塩水を飲ませて吐かせ、元気なら様子を見る
- 食べた量と尿の色を記録し、赤い尿は貧血の兆候なので当日中に受診する
正解D.食べた量と尿の色を記録し、赤い尿は貧血の兆候なので当日中に受診する
解説ネギ類はハクビシンにも有害で、赤茶色の尿は赤血球が壊れて起きる貧血のサインである。摂取量・時刻・尿の色を記録し、当日中に受診して血液検査と処置を受ける。少量だから平気という判断は貧血の進行を見逃す。水を飲ませるだけでは毒性は消えず、3日後では貧血が重くなる。食塩水の催吐は塩中毒と咬傷の危険があり、しかも食後1日たっているので無意味である。
課題持ち込まれた餌を確認せず給餌した管理の甘さが根本原因で、与えてはいけない食材のリストが施設の受け入れ手順にない。尿の色の変化を記録する習慣がなく、気づきが遅れた。
改善案外部からの食材は職員が中身を確認してから使う手順にし、ネギ類・チョコレート・味付け食品・生肉は使わないと掲示する。寄付者向けに受け入れ可能な食材リストを配る。尿と便の色を毎日記録し、赤い尿は当日受診と基準化する。
Q17台風で停電、真冬の屋外施設環境・災害
1月の深夜、暴風雪で施設が停電し、収容室の暖房が止まった。気温は0℃近くまで下がり、金網ケージは風が吹き抜ける。収容中の個体は寝箱の中で丸くなっているが、干し草は湿っていて少ない。復旧は翌朝以降と言われている。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- ケージの風上側を板や毛布で覆い、寝箱に乾いた干し草や新聞紙を詰め、湯たんぽを噛めない位置に置く
- 個体を抱えて暖かい事務室で膝の上に乗せて温める
- 使い捨てカイロを寝箱の中に入れて密着させる
- ドライヤーの代わりに石油ストーブをケージの真横で焚く
正解A.ケージの風上側を板や毛布で覆い、寝箱に乾いた干し草や新聞紙を詰め、湯たんぽを噛めない位置に置く
解説停電時の保温は風を遮り、寝床の乾いた断熱材を増やし、個体が噛めない位置に湯たんぽを置くのが安全。マニュアルの「寝箱に干し草を増やし風を遮る、暖房器具は噛めない位置」に沿う。野生動物を抱いて温めるのは咬傷と脱走の危険が高く、ストレスで悪化する。カイロは直接触れれば低温やけどを起こし、噛み破ると中身を誤飲する。石油ストーブをケージ横に置けば火災と一酸化炭素の危険があり、干し草に引火する。
課題暴風雪の予報が出ていたのに、停電時の保温手段が準備されておらず、寝床の干し草も湿って少なかった。金網ケージが風を遮れない構造で、冬季の防風対策がなかった。
改善案冬季は寝箱に乾いた干し草を多めに常備し、風を遮る板や防風シートを備える。停電に備えて湯たんぽ・毛布・新聞紙を保管し、噛めない設置方法を決めておく。災害時の点検巡回とポータブル電源の導入を検討する。
Q18棚板が外れて床に落ちた事故
8月の夜、ケージ上段の棚板の固定金具が緩み、ハクビシンが乗った瞬間に棚ごと2m下のコンクリート床に落ちた。個体は立ち上がったが右後ろ足を浮かせて三本足で寝箱に向かい、箱の前で座り込んだ。床には敷材がなく、落下時に鈍い音がした。個体は近づくとうなって動かない。
この後の対応として最も適切なものはどれか
- 歩けたので骨折はないと判断し、翌週の定期チェックまで待つ
- 追わずに暗い箱で安静にし、足の腫れと歩き方を観察して当日中に受診する
- 足を伸ばして触り、折れている場所を自分で探す
- 痛みを紛らわせるため登り木で遊ばせて気を紛らわせる
正解B.追わずに暗い箱で安静にし、足の腫れと歩き方を観察して当日中に受診する
解説2mのコンクリート床への落下で足を浮かせて歩くのは骨折や靭帯損傷の疑いが強い。マニュアルどおり箱で安静にし、腫れと歩き方を観察して当日中に受診する。野生動物は痛みを隠して歩くため、歩けることは骨折の否定にならず、翌週まで待てば骨がずれたまま固まる。足を触って探る行為は咬傷の危険があり、骨折部をさらに損傷する。遊ばせれば悪化し、登攀中に再落下する。
課題棚板の固定金具の緩みを点検していなかったことが直接原因で、登攀力の高いハクビシンが乗る負荷を想定した構造になっていなかった。床がコンクリートで衝撃を吸収する敷材がなかった。
改善案棚板と登り木は週1回金具を締め直し、個体の体重の数倍に耐える固定にする。落下点になりやすい床には厚い敷材やマットを敷く。落下後に足を浮かせる・動かない場合は当日受診と手順書に書く。
Q19前足から血が止まらない救命救急
4月の夕方、ケージの金網の隙間に前足を挟んで引き抜いた個体が、指先から出血し床に血だまりができ始めた。個体は寝箱に入って足をなめている。職員は革手袋と清潔なタオルを持っており、動物病院は車で20分だ。出血は滴り続けており、個体は革手袋の手を近づけるとうなって咬もうとする。
止血の手順として最も適切なものはどれか
- 傷口に止血剤の代わりに小麦粉や線香の灰を押し込む
- 輪ゴムで足の付け根をきつく縛り、血を完全に止める
- 清潔な布で傷を5分以上圧迫し、染みたら上から重ね、病院へ搬送する
- 布を30秒ごとに外して止まったか確認を繰り返す
正解C.清潔な布で傷を5分以上圧迫し、染みたら上から重ね、病院へ搬送する
解説出血の基本は清潔な布での圧迫で、5分以上外さず続け、染みたら上から布を重ねる。可能なら四肢を心臓より高く保ち、止血しながら病院へ運ぶ。小麦粉や灰は感染源になり、傷の中に残って処置を難しくする。輪ゴムでの緊縛は血流を遮断して組織壊死を招き、野生動物に正しく装着することも不可能。布を何度も外せばできかけた血の塊がはがれて出血が再開する。
課題金網の隙間に足が入る構造で、挟まれ事故を想定したケージ設計になっていなかった。止血は圧迫を続けることが基本という知識が共有されておらず、民間療法に頼る誤りが起きやすい環境だった。
改善案金網の目を足が入らない大きさにするかパネルで覆う。救急セットに清潔なガーゼとタオルを多めに入れ、圧迫5分以上・外さない・重ねるという止血手順を掲示する。出血事故は圧迫しながら搬送と決め、病院までの経路と連絡を事前に確認する。
Q20便に白く動く節がついていた病気
9月の朝、収容1週間の個体のため糞場所を掃除中、便の表面に米粒ほどの白い節が複数動いているのを見つけた。個体はよく食べているが、腹がやや膨らみ毛づやが悪い。職員は素手で掃除道具を持ち、その後に別の個体の世話に向かう予定だ。
最も適切な対応はどれか
- 虫が出たので市販の犬用駆虫薬を与える
- よく食べているので問題なく、掃除を続けて別の個体の世話に行く
- 白い節は餌の繊維なので気にせず様子を見る
- 手袋に替えて便を密閉し器具を消毒、獣医師に検便と駆虫を依頼し他個体の世話は後回しにする
正解D.手袋に替えて便を密閉し器具を消毒、獣医師に検便と駆虫を依頼し他個体の世話は後回しにする
解説便に動く白い節は条虫などの寄生虫で、感染源になる便と器具の扱いが重要である。手袋に替えて便を密閉廃棄し、器具を消毒し、獣医師に検便と駆虫を依頼する。同じ器具で別の個体を世話すれば感染を広げるので順番を変える。犬用駆虫薬は種類と量が不適切で、虫の種類が分からなければ効かない。食欲があっても腹の膨らみと毛づやの悪さは寄生虫の影響で、放置すれば衰弱する。餌の繊維は動かない。
課題収容直後に検便を行う手順がなく、1週間寄生虫を抱えたまま飼養していた。素手で掃除し個体間で器具を共有する運用は、施設全体に寄生虫を広げるリスクだった。
改善案収容初日に検便を行い獣医師の駆虫を受ける流れを標準化する。掃除は手袋着用、糞は毎日密閉廃棄、器具は個体ごとに分けて消毒する。世話の順番は健康個体から隔離個体へ、と動線を決める。
Q21同居させた2頭がケンカで深い傷怪我
2月の朝、ケージが足りず一時的に同居させた成獣2頭が夜中にケンカし、一方の首筋と肩に深い咬み傷が複数できていた。傷口は毛に隠れて見えにくいが、触ると熱く腫れており、個体はうなって近づけない。もう一方の個体にも口元に血がついており、ケンカの原因は餌皿の奪い合いらしい。
最も適切な対応はどれか
- 直ちに別ケージに分け、傷の位置を写真で記録して当日中に受診する
- 野生なら日常的にケンカするので、そのまま同居を続ける
- 傷口に消毒液をスプレーして同居のまま様子を見る
- 弱い方の個体を山に放して解決する
正解A.直ちに別ケージに分け、傷の位置を写真で記録して当日中に受診する
解説ハクビシンは基本単独で暮らし、成獣同士の同居は激しい闘争を招く。まず別ケージに分け、傷の位置と腫れを写真で記録し、当日中に受診する。咬傷は見た目以上に深く、熱と腫れは膿瘍の始まりで抗菌薬が必要になる。同居を続ければ再度の闘争で致命傷になる。消毒液のスプレーは深部に届かず、野生動物に近づく行為自体が危険。放獣は許可の範囲外で、傷ついた個体を野外に捨てることになる。
課題単独性の強い動物を成獣同士で同居させた判断が誤りで、ケージ不足という施設側の事情を優先してしまった。咬傷の重症度を見た目で判断し、夜間の闘争を監視する手段もなかった。
改善案成獣は1頭1ケージを原則とし、収容数の上限を設ける。受け入れ余力がなければ都道府県に相談して別施設と調整する。親子以外の同居は行わず、一時的に同室にする場合も仕切りで接触を防ぐ。
Q22暗い収容室で足元の個体を踏んだ事故
12月の夜、懐中電灯を持たずに収容室に入った職員が、前室の床に出ていた個体に気づかず体の上に足を乗せてしまった。個体は悲鳴をあげて寝箱に逃げ込み、その後出てこない。踏んだのは腹から腰のあたりのようだった。
最も適切な対応はどれか
- 逃げられたので元気と判断し、通常どおり退室する
- 寝箱から出して歩き方・呼吸・腹の張りを観察し、歩けない・呼吸が速ければ即受診、それ以外も当日受診する
- 寝箱から引きずり出して腹を押し、痛がるか確かめる
- 好物を置いて翌朝まで出てくるのを待つ
正解B.寝箱から出して歩き方・呼吸・腹の張りを観察し、歩けない・呼吸が速ければ即受診、それ以外も当日受診する
解説成人の体重で腹腰部を踏めば内臓損傷や骨盤骨折の可能性があり、野生動物は痛みを隠して逃げるので「逃げた=無事」ではない。安全な距離から歩き方・呼吸・腹の張りを観察し、歩けない・呼吸が速い・歯茎が白ければ即受診、それ以外でも当日中に受診する。腹を押す行為は損傷を悪化させ咬傷を招く。翌朝まで待てば内出血が進み手遅れになる。
課題照明を使わずに収容室へ入った手順違反と、前室に個体が出てこられる構造が重なった。夜行性で暗い時間に足元に出てくる習性を理解した動線になっていなかった。
改善案入室時は照明を点けるか懐中電灯を必ず持ち、扉を開ける前に個体の位置を確認する手順にする。前室と飼養室の間に個体が出られない仕切りを設ける。踏んだ場合は当日受診と手順書に明記し、呼吸や腹の張りの観察ポイントを掲示する。
Q23子どもが素手で幼獣を拾ってきた感染症・衛生
6月の昼、施設に住民が小学生と来訪し、子どもが抱えた段ボールの中に目が開いたばかりのハクビシンの幼獣が2頭いた。子どもは素手で抱いて頬ずりをしたという。幼獣は鼻水を垂らし、段ボールには下痢便がついている。
施設職員の対応として最も適切なものはどれか
- 幼獣を受け取り、子どもには「ありがとう」と言って帰ってもらう
- 子どもにもう一度抱かせて写真を撮り、思い出にしてから引き取る
- 手袋・マスクで受け取り隔離し、子どもと保護者に手洗いと着替えを指示し、皮膚症状や発熱が出たら受診するよう伝え、都道府県へ連絡する
- 幼獣を家で育てるよう勧め、ミルクの与え方を教える
正解C.手袋・マスクで受け取り隔離し、子どもと保護者に手洗いと着替えを指示し、皮膚症状や発熱が出たら受診するよう伝え、都道府県へ連絡する
解説鼻水と下痢のある幼獣は感染症を持つ可能性があり、素手で頬ずりした子どもはSARS関連コロナウイルス・疥癬・寄生虫などの曝露を受けている。職員は手袋・マスクで受け取って隔離し、子どもと保護者にすぐ手洗いと着替え、後日の皮膚症状や発熱時の受診を伝え、都道府県へ保護の連絡をする。何も伝えず帰せば家庭内に広がる。再び抱かせるのは曝露を重ねる。家で育てるよう勧めるのは鳥獣保護管理法違反の勧めになる。
課題住民が野生動物の幼獣は触ってはいけないことを知らず、子どもが口元に近づけていた。受け入れ時の防護と来訪者への健康指導が施設の手順に含まれていなかった。
改善案受付に「野生動物は触らない・口元に近づけない」の掲示を置き、持ち込み時は手袋とマスクで受け取る手順にする。来訪者に手洗い・着替え・症状出現時の受診を説明したカードを渡す。幼獣の受け入れは都道府県への連絡を必須にし、受け取った個体は隔離観察する。
Q24口臭が強く顔の片側が腫れた病気
7月の夕方、飼養5年の個体の口臭が数日前から強くなり、今日は左の頬が腫れて目の下が膨らんでいる。果物を右側だけで噛み、よだれが左から垂れる。食欲は半分ほどに落ちている。数日前から餌を残すことも増え、金網を噛む様子が以前から見られていた。体重は昨年より減っている。
最も適切な対応はどれか
- 腫れた頬を冷やし、数日様子を見る
- 口臭対策に人用のマウスウォッシュを水に混ぜる
- 腫れを針で刺して膿を出す
- 歯根の感染による膿瘍を疑い、柔らかい餌にして当日中に受診する
正解D.歯根の感染による膿瘍を疑い、柔らかい餌にして当日中に受診する
解説口臭・片側噛み・よだれ・目の下の腫れは歯根の感染が広がった膿瘍の典型で、歯周病や歯の破折から進行する。柔らかい餌にして当日中に受診し、鎮静下での処置を受ける必要がある。冷やして様子を見れば感染が顔面に広がり、眼や鼻に達する。マウスウォッシュは中毒と拒水を起こし、膿瘍には無効。針で刺す行為は咬傷の危険があるうえ、感染を深部に広げ、根本の歯を処置しなければ再発する。
課題数日前から強くなった口臭をサインとして捉えられず、口腔疾患の進行を見逃した。年1回の口腔チェックが行われておらず、高齢期に増える歯周病への備えがなかった。
改善案毎日の給餌時に口臭・片側噛み・よだれを観察し、異常は当日受診と基準化する。年1回は鎮静下の口腔チェックを獣医師と計画する。金網を噛ませない構造に改修し、硬すぎる骨やおやつを与えない。
Q25衰弱個体を40分かけて病院へ運ぶ救命救急
11月の夜、収容したばかりの衰弱したハクビシンを、車で40分の動物病院へ運ぶことになった。個体は体が冷たく動きが鈍いが、手を近づけると歯を見せる。手元には段ボール箱・硬いキャリー・毛布・タオル・湯たんぽがある。
搬送方法として最も適切なものはどれか
- 硬いキャリーに毛布を敷き、タオルで包んだ湯たんぽを入れて布で覆い暗くし、揺らさず静かに運ぶ
- 膝の上に毛布で包んで抱き、体温で温めながら運ぶ
- 金網ケージのまま荷台に載せ、風を通して酸素を確保する
- エアコンを最高温度にして車内を暑くし、裸の湯たんぽに密着させる
正解A.硬いキャリーに毛布を敷き、タオルで包んだ湯たんぽを入れて布で覆い暗くし、揺らさず静かに運ぶ
解説搬送は暗く狭い空間で保温し、揺らさず静かに運ぶのが基本である。硬いキャリーに毛布を敷き、タオルで包んだ湯たんぽを噛めない位置に入れ、布で覆って視界を遮る。膝に抱くのは咬傷と車内での脱走の危険があり、運転も危うくなる。金網のまま荷台に載せれば風で体温を失い、ストレスも大きい。車内を暑くして裸の湯たんぽに密着させると低温やけどや急激な体温上昇を起こす。
課題収容直後の衰弱個体を長距離搬送する際の保温と視界遮断の準備が、頭の中で整理されていなかった。搬送中に個体が咬んだり逃げたりする危険が十分想定されていなかった。
改善案搬送用に硬いキャリー・毛布・覆い布・タオルで包んだ湯たんぽをセットにして常備する。車内温度は20℃前後を目安にし、急加速や急停止を避ける。到着前に病院へ電話し、到着時刻と個体の状態を伝えて受け入れ準備を依頼する。
Q26果物だけで育てた幼獣の足が曲がった病気
8月の朝、6月に保護して果物とパンで育ててきた幼獣が、前足を外側に曲げて歩き、登り木に登れなくなった。骨格が細く、触ると足の関節が膨らんでいる。担当者は「ハクビシンは果実食だから果物だけで良い」と思っていた。
最も適切な対応はどれか
- 成長期の一時的な歩き方なので、そのまま果物を増やして様子を見る
- 栄養性の骨疾患を疑い、動物性食材を含む食事に切り替え、獣医師に骨の評価と食事指導を受ける
- 人用のカルシウム剤を大量に餌に混ぜて自己判断で補う
- 足を板で固定して真っすぐに矯正する
正解B.栄養性の骨疾患を疑い、動物性食材を含む食事に切り替え、獣医師に骨の評価と食事指導を受ける
解説ハクビシンは果実を好むが雑食で、果物とパンだけでは成長期にカルシウムやたんぱく質が不足し、骨が曲がる栄養性骨疾患を起こす。動物性食材(ゆで鶏肉・卵・昆虫)を3割程度含む食事に切り替え、獣医師に骨の評価と食事指導を受ける。果物を増やせば悪化する。人用のカルシウム剤の大量投与は量が不明で、他の栄養とのバランスが崩れる。板での固定は骨が弱い状態では骨折の原因になり、野生動物では保定も不可能である。
課題「果実食」という知識が一面的で、成長期の幼獣に必要な動物性たんぱく質とミネラルの理解がなかった。人工哺育から離乳後の食事計画を獣医師と相談しておらず、体の変化を記録する習慣もなかった。
改善案幼獣の食事は獣医師の指導で設計し、果物・動物性食材・野菜を組み合わせる。週1回の体重測定と歩き方・骨格の観察を記録し、異常は早期に受診する。登り木での運動を確保し、骨格の発達を促す環境にする。
Q27登り木から落ちて爪がはがれた怪我
10月の夜、ケージ内の登り木が倒れて個体が落ち、後ろ足の爪が1本根元から剥がれて出血している。個体は寝箱で足をなめているが歩けており、床に血の跡が点々と続く。職員は革手袋とガーゼを持っている。登り木は床に置いただけで固定されておらず、以前からぐらついていた。
最も適切な対応はどれか
- 歩けるので放置し、血が自然に止まるのを待つ
- 剥がれた爪の根元に接着剤をつけて止める
- 可能なら清潔な布で圧迫し、安静にして出血の持続や足の引きずりがあれば当日受診する
- 足全体を水に浸けて血を洗い流し続ける
正解C.可能なら清潔な布で圧迫し、安静にして出血の持続や足の引きずりがあれば当日受診する
解説爪の剥離は出血が多く見えるが、清潔な布で圧迫すれば止まることが多い。野生動物では保定が難しいため、無理なら箱で安静にし、出血が続く・足を引きずる・腫れる場合は当日中に受診する。放置して出血が続けば貧血と感染につながる。接着剤は組織を傷め感染源になる。水に浸けると血が固まらず出血が長引き、個体を濡らしてストレスと体温低下を招く。
課題登り木が固定されておらず倒れたことが原因で、ぐらつく構造を放置していた。爪の出血への対処(圧迫・安静・受診基準)が手順として共有されていなかった。
改善案登り木と棚は壁と床に固定し、週1回ぐらつきを点検する。床に厚い敷材を敷いて落下時の衝撃を減らす。爪の出血は圧迫、歩行異常は当日受診と手順書に明記し、ガーゼと革手袋を救急セットに常備する。
Q28暖房のコードを噛んで倒れた事故
1月の夜、収容室でパネルヒーターの電源コードがケージ内に垂れており、ハクビシンがコードをくわえたまま倒れた。口元が焦げたように黒く、体がけいれんしている。コードはまだコンセントにつながっている。職員は一人で、ゴム手袋はない。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- すぐに個体を抱き上げてコードから引き離す
- 口からコードを引き抜いて呼吸を確認する
- 水をかけて火花を消し、個体を冷やす
- 個体に触れずコンセントを抜くかブレーカーを落とし、通電を止めてから呼吸と意識を確認する
正解D.個体に触れずコンセントを抜くかブレーカーを落とし、通電を止めてから呼吸と意識を確認する
解説通電中の個体に触れると救助者も感電する。まず触れずにコンセントを抜くかブレーカーを落とし、通電を止めてから呼吸・意識を確認し、呼吸がなければ手袋を着けて気道確保と胸部圧迫を行いながら獣医師へ搬送する。感電は口の火傷に加え、数時間後に肺水腫を起こすことがあるため、見た目が回復しても受診が必要である。抱き上げる・口からコードを抜く行為は感電事故を招く。水は電気を通し、感電の範囲を広げる。
課題電源コードがケージ内に垂れる設置は、何でも噛む習性を無視した重大な配置ミスだった。暖房器具は噛めない位置に置くという基準が守られず、感電時の初動(通電を止める)も周知されていなかった。
改善案暖房器具とコードはケージの外に設置し、コードは金属管やカバーで保護する。ブレーカーの位置を全職員に周知し、感電時は通電停止が最優先と掲示する。感電後は見た目が元気でも必ず当日受診し、呼吸の変化を数日観察する。
Q29倉庫に置いた殺鼠剤がなくなっていた中毒・誤飲
3月の朝、施設の倉庫でネズミ対策に置いた殺鼠剤の袋が破れて中身が減っていた。倉庫につながる隙間から収容個体が夜間に入った形跡があり、個体の歯茎がやや白く、鼻から少量の血がにじんでいる。元気はあるように見える。
最も適切な対応はどれか
- 殺鼠剤の種類と推定摂取量を記録し、製品の袋を持って直ちに受診する
- 元気なので出血が増えるまで様子を見る
- ビタミン剤を果物に混ぜて与え、1週間観察する
- 吐かせるために食塩水を飲ませる
正解A.殺鼠剤の種類と推定摂取量を記録し、製品の袋を持って直ちに受診する
解説殺鼠剤の多くは血液を固まりにくくする成分で、鼻血と歯茎の白さはすでに出血が始まっているサインである。摂取した製品名・成分・推定量を記録し、袋を持って直ちに受診する。治療は成分によって異なり、獣医師の判断で解毒や輸血が必要になる。元気に見えても内出血は進み、数日後に急死する。自己判断のビタミン剤は量も種類も不適切で、治療の代わりにならない。食塩水の催吐は塩中毒と咬傷の危険があり、夜間の摂取なら吐かせる時期も過ぎている。
課題飼養施設内に殺鼠剤を置き、収容個体が入り込める隙間を放置していたことが根本原因である。数cmの隙間からも侵入する登攀力と探索行動を理解せず、毒物の管理と施設の構造を点検していなかった。
改善案施設内の殺鼠剤は撤去し、ネズミ対策は物理的な侵入防止に切り替える。倉庫と収容室の隙間を3cm以下にふさぎ、個体の脱走経路を月1回点検する。毒物を使う場合は製品名と成分を記録しておき、中毒時に獣医師へ即伝えられるようにする。
Q30震度6の地震、ケージが倒れた環境・災害
4月の深夜、震度6の地震で収容室のケージが倒れ、扉が歪んで開き、個体の姿が見えない。室内は棚が崩れ、ガラスが散乱し余震が続いている。停電で真っ暗で、職員は懐中電灯を持って駆けつけた。収容室の出入口の扉は閉まっている。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 暗がりの中を手探りで個体を探し、見つけたら素手で捕まえる
- 自身の安全を確保し、出入口の扉を閉めたまま室内に個体がいる前提で明るくなってから革手袋で確認し、都道府県に状況を報告する
- 出入口を開け放って個体を自然に逃がし、野生に返す
- 余震が止まるまで数日間放置し、餌だけ入口から投げ入れる
正解B.自身の安全を確保し、出入口の扉を閉めたまま室内に個体がいる前提で明るくなってから革手袋で確認し、都道府県に状況を報告する
解説災害時はまず人の安全が最優先で、ガラスが散乱し余震が続く暗い室内で手探りの捜索は負傷と咬傷を招く。出入口の扉を閉めて室内に閉じ込めた状態を保ち、明るくなってから革手袋で安全に確認し、都道府県へ逸走の可能性を含めて報告する。開け放って逃がすのは許可飼養個体の逸走であり、人慣れした個体が住宅地に出れば事故や被害につながる。数日の放置は負傷していれば手遅れになり、水も途切れる。
課題ケージが床や壁に固定されておらず、地震で倒れて扉が歪む構造だった。災害時の職員の行動手順(人の安全・封じ込め・報告)が決まっておらず、懐中電灯と革手袋が同じ場所になかった。
改善案ケージを壁と床に固定し、扉は歪んでも開かない施錠にする。災害時手順として、人の安全確保・出入口の閉鎖・明るくなってからの確認・都道府県への報告を文書化する。懐中電灯・革手袋・捕獲用の網と箱を出入口近くに常備し、年1回訓練する。
Q31寝箱で動かない個体、呼吸は?救命救急
9月の昼、昨夜まで普通に食べていた成獣が寝箱の中で横たわり、箱を軽く叩いても動かない。胸は動いているように見えるが、速いのか遅いのか分からない。職員は革手袋と時計を持ち、ケージの外から観察している。ケージ内の餌は昨夜分が残っており、水はほとんど減っていない。
状態を評価する手順として最も適切なものはどれか
- 大声で名前を呼び、反応がなければ死んだと判断する
- 箱から引きずり出して胸に耳を当てる
- 箱を軽く叩いて反応を見て、胸の動きを数え、1分20〜40回より速い・遅い・開口呼吸なら異常として獣医師に連絡する
- 昼間は寝る動物なので夕方まで起こさず待つ
正解C.箱を軽く叩いて反応を見て、胸の動きを数え、1分20〜40回より速い・遅い・開口呼吸なら異常として獣医師に連絡する
解説意識と呼吸の評価は、箱を軽く叩いて反応を見ること、胸の上下を1分数えることで行う。ハクビシンの安静時呼吸は1分20〜40回が目安で、それより速い・遅い・口を開けている場合は異常で、獣医師に連絡し指示を受ける。可能なら内腿の付け根で脈と歯茎の色も確認する。名前を呼んでも野生動物は反応せず、死亡判断の根拠にならない。引きずり出せば咬傷と悪化を招く。昼間に寝るのは正常だが、叩いても反応しないのは正常な睡眠ではない。
課題夜行性だから昼間は動かないという思い込みで、異常な無反応と正常な睡眠を区別する基準が職員になかった。呼吸数の正常値を知らず、観察しても異常の判断ができなかった。
改善案安静時の呼吸数(1分20〜40回)と脈・歯茎の色の確認方法を手順書と掲示に載せる。毎日の巡回で箱を軽く叩いた反応を記録し、普段との違いを把握する。異常時の連絡先と伝える内容(呼吸数・歯茎の色・最後に食べた時刻)を決めておく。
Q32熱が出たり下がったりを繰り返す病気
6月の朝、1か月前に農地で保護した個体が、数日ごとに元気がなくなり食欲が落ちる状態を繰り返している。収容時に多数のマダニが付いていた。今朝は寝箱から出ず、耳を触ると熱く、歯茎が白っぽい。体重は収容時より減っている。
最も適切な対応はどれか
- 元気な日もあるので回復途中と考え、果物を増やして見守る
- 解熱のため人用の解熱剤を果物に混ぜる
- 氷枕で体を冷やし、熱が下がるまでケージを冷房で冷やす
- 繰り返す発熱と貧血をダニ媒介感染症の疑いとして記録し、ダニ付着歴を伝えて当日中に受診する
正解D.繰り返す発熱と貧血をダニ媒介感染症の疑いとして記録し、ダニ付着歴を伝えて当日中に受診する
解説マダニが多数付着していた個体が繰り返す発熱と元気消失、歯茎の白さ(貧血)を示す場合、ダニ媒介の感染症を疑う。発熱の周期と体重変化を記録し、ダニの付着歴を獣医師に伝えて当日中に受診し、血液検査を受ける。元気な日があるのは回復ではなく周期的な症状で、放置すれば衰弱する。人用の解熱剤はハクビシンに重い中毒を起こす。氷枕や冷房は発熱の原因を治さず、衰弱した個体の体温を奪う。
課題収容時のマダニ付着を記録していたのに、その後の発熱との関連を結びつけられなかった。周期的な症状を「元気な日もある」と楽観的に解釈し、体重減少という客観的な悪化を見逃していた。
改善案収容時のダニ付着・外傷・体重を記録票に残し、後の症状と照合できるようにする。週1回の体重測定と毎日の食欲記録を行い、2回以上繰り返す元気消失は受診と基準化する。発熱の疑いがある時は人用薬を使わず、獣医師に相談する。
Q33ヒーターに寄りかかり腹に赤いただれ怪我
12月の朝、ケージ外に設置したパネルヒーターに金網越しに腹を密着させて寝ていた個体を見ると、腹の毛が抜け皮膚が赤くただれて一部が白く硬くなっている。個体は患部をなめ続け、触ろうとするとうなる。ヒーターは昨夜から最高出力で、ケージの金網に密着した位置に置かれていた。
最も適切な対応はどれか
- ヒーターをケージから離し、患部を濡れタオルで短時間冷やして当日中に受診する
- 火傷用の人用軟膏を厚く塗り、ヒーターはそのままにする
- 氷を直接患部に当てて長時間冷やし続ける
- なめさせておけば治るので、そのまま様子を見る
正解A.ヒーターをケージから離し、患部を濡れタオルで短時間冷やして当日中に受診する
解説金網越しでも長時間密着すれば低温やけどになり、皮膚が白く硬い部分は深い損傷で、数日後に壊死が広がることが多い。まずヒーターを離して再発を防ぎ、保定できる範囲で濡れタオルで短時間冷やし、当日中に受診する。人用の軟膏はなめて中毒を起こし、原因のヒーターを残せば繰り返す。氷の直接接触はさらに組織を傷める。なめ続ける行為は傷を広げ感染を招くため、放置は不適切である。
課題暖房器具をケージに密着させた設置で、個体が金網越しに寄りかかれる位置にあった。低温やけどは気づきにくく、冬季の皮膚観察が不十分で発見が遅れた。
改善案暖房器具はケージから距離を置き、ケージ全体を温めるのではなく寝箱に干し草を増やす方法を主体にする。冬は毎朝、腹や足の皮膚を離れた位置から観察し、脱毛や赤みは当日相談と基準化する。温度計をケージの複数箇所に置き過熱を防ぐ。
Q34深い水容器に幼獣が落ちた事故
7月の夕方、暑さ対策で置いた深さ20cmのバケツの水に、離乳したばかりの幼獣が頭から落ちているのを見つけた。引き上げると体は濡れてぐったりしているが、鼻から水を吹いて弱い呼吸をしている。体は冷たく、わずかに動く。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 逆さに持って振り、水を全部出してから寝箱に戻す
- タオルで水気を拭き取り保温して呼吸を観察し、動物病院に連絡して受診する
- ドライヤーの熱風を至近距離で当てて一気に乾かす
- 呼吸があるので寝箱に戻し、翌朝まで様子を見る
正解B.タオルで水気を拭き取り保温して呼吸を観察し、動物病院に連絡して受診する
解説溺水後は低体温と肺に入った水による後からの呼吸障害が問題になる。タオルで水気を拭き取って保温し、呼吸の回数と開口呼吸の有無を観察しながら動物病院に連絡し受診する。見た目が回復しても数時間後に悪化することがあるため、翌朝まで待つのは危険。逆さに振るのは幼獣の首や内臓を傷め、水はほとんど出ない。ドライヤーの熱風は幼獣の皮膚を火傷させ、急激な加温はショックを招く。
課題深いバケツを幼獣のケージに置いた判断が誤りで、登攀力はあっても水からは這い上がれない構造になっていた。暑さ対策を急ぐあまり、幼獣の体格と安全を考慮しなかった。
改善案水容器は浅く縁が低い陶器皿にし、幼獣には深さ数cm以下にする。暑さ対策は日よけ・通風・凍らせたボトルを主体にする。溺水後は保温と呼吸観察、当日受診を手順書に明記し、夕方以降の巡回を増やす。
Q35新しい収容個体をどこに入れるか感染症・衛生
5月の午後、県から新たに1頭のハクビシンの受け入れ依頼があった。施設では現在3頭を飼養しており、空きケージは健康な個体の隣にしかない。新しい個体は見た目は元気だが、保護された経緯は不明で検便も皮膚検査もまだ行っていない。
受け入れ方針として最も適切なものはどれか
- 元気なので健康な個体の隣のケージに入れ、同じ器具で世話をする
- 健康な個体の隣に入れるが、挨拶代わりに金網越しに接触させて慣らす
- 別棟か仕切った隔離室に入れ、検便と皮膚検査を済ませ最低2週間は専用の器具と最後の順番で世話をする
- ケージが足りないので健康な個体と同居させる
正解C.別棟か仕切った隔離室に入れ、検便と皮膚検査を済ませ最低2週間は専用の器具と最後の順番で世話をする
解説由来不明の新規個体は疥癬・寄生虫・ジステンパー・SARS関連コロナウイルスなどを持っている可能性があり、見た目の元気さは判断材料にならない。隔離室に入れて検便と皮膚検査を行い、最低2週間は専用の器具を使い、世話の順番を最後にして他個体への伝播を防ぐ。隣のケージで器具を共用すれば疥癬や寄生虫が広がる。金網越しの接触は飛沫と接触感染の機会になる。単独性の成獣を同居させれば闘争と感染の両方を招く。
課題施設の収容余力を超えて受け入れようとし、隔離スペースと検査の手順が受け入れ前に確保されていなかった。見た目で健康を判断し、新規個体が持ち込む感染症のリスクを軽視していた。
改善案受け入れ前に隔離室の空きと検査体制を確認し、余力がなければ県に相談して調整する。新規個体の隔離期間・検査項目・器具の専用化・世話の順番を手順書に定める。隔離室は別棟か仕切りと独立した換気を備えた場所にする。
Q36ブドウを一房丸ごと食べてしまった中毒・誤飲
9月の夜、職員が収穫したブドウを一房ケージ横の台に置いたまま離れ、戻ると個体が金網から引き込んで一房丸ごと食べていた。体重4kgの成獣で、食べてから1時間ほど。今は元気だが、職員はブドウは果実だから問題ないと思っている。
最も適切な対応はどれか
- ブドウは本来の食べ物なので何もしない
- 塩水で吐かせて様子を見る
- 翌日の尿が出なければその時に受診する
- 量と時刻を記録して動物病院に連絡し、数日間の飲水量と尿の量を観察するよう指示を受ける
正解D.量と時刻を記録して動物病院に連絡し、数日間の飲水量と尿の量を観察するよう指示を受ける
解説ハクビシンはブドウを好むが、大量摂取は腎臓への負担が懸念され、マニュアルでも「ブドウの大量給餌」は禁止としている。量と時刻を記録して動物病院に連絡し、獣医師の判断で処置を受け、飲水量と尿の量・回数を数日間観察する。元気に見えても腎障害は遅れて現れる。塩水での催吐は塩中毒と咬傷の危険がある。尿が出なくなってからでは腎障害が進んでおり、受診のタイミングとして遅すぎる。
課題食材をケージの手が届く位置に置いたまま離れた不注意と、ブドウの大量摂取が有害になりうるという知識の欠如が重なった。金網から外の物を引き込む習性を考慮した動線になっていなかった。
改善案ケージの周囲1m以内に食材や物を置かず、保管は扉付きの棚にする。与えてはいけない物・量に注意する食材を掲示し、職員全員で共有する。中毒時は記録して即連絡という手順を徹底し、観察項目(飲水量・尿量)を記録できる用紙を用意する。
Q37毎年太っていく飼養個体病気
11月の昼、飼養6年目の個体の体重を量ると6.5kgで、2年前より2kg増えていた。腹が垂れ、登り木に登らず床で寝て過ごすことが増え、呼吸が時々荒い。餌は職員が果物と好物のバナナを多めに与えており、来訪者も菓子を与えることがある。
最も適切な対応はどれか
- 獣医師と相談して食事内容と量を見直し、登り木や餌を隠す探索遊びで運動量を増やし、来訪者の給餌を禁止する
- 太っているので餌を急に半分にして一気に痩せさせる
- ケージの外に出して走らせ、運動で体重を落とす
- 太っていても元気なら問題ないので今のままにする
正解A.獣医師と相談して食事内容と量を見直し、登り木や餌を隠す探索遊びで運動量を増やし、来訪者の給餌を禁止する
解説2年で2kgの増加と活動低下、荒い呼吸は肥満による負担のサインで、関節や心臓、糖代謝の病気につながる。獣医師と相談して果物偏重の食事を見直し、動物性食材と野菜を組み合わせ、登り木や餌を隠す探索行動で自然に運動を増やす。来訪者の菓子は禁止する。急激な減食は栄養障害と体調悪化を招く。ケージの外に出すのは逸走と法的な問題を起こす。元気に見えても肥満は病気の原因であり、放置は不適切である。
課題好物を多めに与える職員の習慣と来訪者の給餌が重なり、果物偏重で高カロリーの食事になっていた。体重を定期的に記録せず、行動の変化(登らない・床で寝る)を肥満のサインと捉えていなかった。
改善案月1回の体重測定と記録を義務化し、獣医師と目標体重を決める。給餌量を計量し、動物性食材3割・野菜を含む献立にする。餌は隠して探させ、登り木を増やして運動を促す。来訪者の給餌禁止を掲示する。
Q38骨が皮膚から突き出ている怪我
10月の夜、市民から「車にひかれたハクビシンが道路脇にいる」と連絡があり、許可飼養者が現場に向かうと、個体の右前足から骨が皮膚を突き破って見え、傷口に土がついている。個体は動けないが意識があり、近づくと歯を見せる。
収容時の対応として最も適切なものはどれか
- 突き出た骨を押し戻して皮膚の中に収め、包帯を巻く
- 骨には触れず傷口を清潔な布で覆い、布で視界を遮って箱に収容し、動かさず都道府県に連絡して獣医師へ運ぶ
- 傷口の土を水道水で強く洗い流し、消毒液を大量にかける
- 重症なのでその場で安楽死させる
正解B.骨には触れず傷口を清潔な布で覆い、布で視界を遮って箱に収容し、動かさず都道府県に連絡して獣医師へ運ぶ
解説開放骨折は骨と組織が外に出ている状態で、骨を押し戻すと感染を深部に押し込み、骨折部をさらに損傷する。傷口は清潔な布で覆うだけにし、布で視界を遮って暗い箱に収容し、動かさず都道府県に連絡して獣医師へ運ぶ。現場での洗浄は保定が不可能で咬傷を招き、強い水流は組織を傷める。消毒液は深部まで届かず、組織を傷める。安楽死の判断は獣医師が行うもので、飼養者が現場で行うことは法的にも許されない。
課題交通事故個体の収容で開放骨折への対応知識がなく、傷を「治そう」とする行為が悪化を招く危険があった。現場で処置すべきことと、獣医師に任せるべきことの線引きが共有されていなかった。
改善案交通事故個体は「覆う・暗くする・動かさない・運ぶ」の4原則とし、骨や傷には触れないと手順書に明記する。出動セットに清潔な布・毛布・革手袋・硬い箱を入れ、夜間対応可能な動物病院と都道府県の連絡先を携帯する。
Q39寒波の朝、体が冷えて動かない環境・災害
2月の朝、気温マイナス5℃の寒波の後、屋外ケージの寝箱で衰弱した老齢個体が丸まったまま動かない。触ると耳と足が冷たく、反応は鈍いが呼吸はある。寝箱の干し草は少なく、床は凍っている。職員は毛布・湯たんぽ・キャリーを持っている。
最も適切な対応はどれか
- 熱い湯を入れた湯たんぽを裸のまま体に密着させ、ストーブの前に置く
- 寝箱に戻して干し草を足し、日中の気温上昇を待つ
- タオルで包んだ湯たんぽと毛布で穏やかに保温し、動物病院に連絡して受診する
- ぬるま湯に体を浸けて温め、濡れたまま毛布で包む
正解C.タオルで包んだ湯たんぽと毛布で穏やかに保温し、動物病院に連絡して受診する
解説耳と足が冷たく反応が鈍い状態は低体温症で、老齢個体では命に関わる。タオルで包んだ湯たんぽと毛布で穏やかに保温し、キャリーに入れて動物病院に連絡し受診する。熱い湯たんぽの密着やストーブ前の急加温は低温やけどと、末梢の血流が急に戻ることによるショックを起こす。寝箱に戻して待つのは体温が上がらず悪化する。湯に浸けると濡れた体から熱が奪われ、乾かせない野生動物ではかえって冷える。
課題寒波の予報があったのに寝箱の干し草を増やさず、屋外ケージの防風対策もなかった。老齢個体が寒さに弱いという認識が薄く、冬季の朝の巡回で体温状態を確認する習慣がなかった。
改善案寒波前に干し草を増やし、ケージの風上側を板で覆い、老齢・衰弱個体は屋内に移す基準を作る。冬の朝は耳や足の冷えと反応を確認し、鈍ければ保温と受診。湯たんぽはタオルで包み、噛めない位置に置くことを手順書に明記する。
Q40夜10時、今すぐ救急か朝まで待つか救命救急
8月の夜10時、収容中の個体が夕方からぐったりし、今は口を開けて速い呼吸をしながら横たわり、歯茎が紫がかっている。昼間に下痢をしていた。かかりつけは閉まっており、夜間救急は車で50分。職員は「朝まで待って近くの病院に行くか」迷っている。
最も適切な判断はどれか
- 朝まで寝箱で休ませ、翌朝かかりつけに行く
- ネットで症状を調べ、該当する病気がなければ待つ
- 人用の整腸剤を与えて呼吸が落ち着くか様子を見る
- 開口呼吸と紫の歯茎は今すぐ夜間救急の基準なので、電話して向かう
正解D.開口呼吸と紫の歯茎は今すぐ夜間救急の基準なので、電話して向かう
解説口を開けた速い呼吸、歯茎の紫色、ぐったりは、マニュアルの「今すぐ夜間救急へ」に該当する酸素不足とショックのサインで、朝まで待てば死亡する可能性が高い。夜間救急に電話して状態を伝え、保温して向かう。50分の距離でも、待つより生存の可能性が高い。ネット検索は時間を失うだけで診断にならない。人用の整腸剤は中毒の危険があり、呼吸困難の原因を治さない。
課題昼間の下痢の時点で受診を検討せず、夜間に悪化してから判断を迫られた。「今すぐ救急」と「当日中」の基準が職員に浸透しておらず、距離を理由に受診をためらう心理が働いた。
改善案今すぐ救急の基準(けいれん・意識なし・開口呼吸・紫の歯茎・大量出血・体が冷たい熱い)を掲示し、迷ったら電話と決める。夜間救急の連絡先と経路を事前に確認し、下痢など当日基準の症状は日中のうちに受診する。搬送セットを常備する。
Q41目やにと鼻水が3日続く若い個体病気
11月の朝、1か月前に保護した若い個体の両目に黄色い目やにがたまり、鼻水でくしゃみを繰り返して3日たつ。食欲は少し落ちている。施設には他に2頭の収容個体がおり、職員の自宅では犬を飼っている。職員は同じ靴と服で各ケージを回っている。
最も適切な対応はどれか
- ジステンパーを含む感染症を疑い隔離し、目やにを拭いた物は廃棄、服と靴を変えて当日中に受診する
- 風邪なので暖かくして自然に治るのを待つ
- 人用の目薬を点眼し、鼻水はティッシュで拭き取る
- 他の個体も同じ症状が出るか確認してから受診を決める
正解A.ジステンパーを含む感染症を疑い隔離し、目やにを拭いた物は廃棄、服と靴を変えて当日中に受診する
解説若い個体の目やに・鼻水・くしゃみが3日続き食欲が落ちる状態は、ジステンパーなど犬にも感染する病気の初期像で、けいれんに進むこともある。隔離し、目やにを拭いた物は廃棄、服と靴を変えて他個体や自宅の犬に持ち込まないようにし、当日中に受診する。風邪と決めて待てば神経症状に進む。人用の目薬は成分が不適切で、点眼のための保定は咬傷の危険がある。他の個体に広がるのを待つ判断は感染拡大を許す。
課題同じ靴と服で複数のケージを回る運用で、感染症が施設内と職員の自宅の犬まで広がる経路が放置されていた。目やに・鼻水を毎日のチェックリストで見ていながら、受診基準につなげていなかった。
改善案ケージごとに靴底消毒と専用の上着を用意し、隔離個体は最後に世話をする。目やに・鼻水・くしゃみが続く場合は隔離して当日受診と基準化する。犬を飼う職員は帰宅前の着替えと手洗いを徹底し、自宅の犬のワクチン接種を確認する。
Q42尾の先が折れ曲がったまま戻らない怪我
4月の朝、登り木の隙間に尾を挟んだらしく、個体の尾の中ほどが直角に曲がり腫れている。個体は尾を引きずって歩き、登り木に登ろうとしてバランスを崩し落ちかけた。食欲は普通で、触ろうとすると激しく怒る。登り木の継ぎ目には指2本ほどの隙間があり、以前にも足を挟みかけたことがあった。
最も適切な対応はどれか
- 尾は飾りなので何もせず、自然に治るのを待つ
- 尾の骨折を疑い、登り木を外して低い床面だけの環境にし、当日中に受診する
- 曲がった部分を手で真っすぐ戻し、テープで固定する
- 痛みが引くまで登り木で遊ばせて気を紛らわせる
正解B.尾の骨折を疑い、登り木を外して低い床面だけの環境にし、当日中に受診する
解説尾の直角の変形と腫れは骨折の典型で、ハクビシンは長い尾で登攀時の平衡を取るため、骨折した状態で登らせると転落事故につながる。登り木を外して低い環境にし、当日中に受診して処置を受ける。放置すれば骨が変形したまま固まり、感染や壊死に進むこともある。手で戻してテープで固定するのは骨折部を悪化させ、野生動物に対する保定は咬傷を招く。登らせるのは転落の危険を増やす。
課題登り木の隙間に尾が入る構造で、挟まれ事故を想定した設置になっていなかった。尾の機能(平衡)を軽く考え、骨折個体を登攀環境に置き続ける危険を認識していなかった。
改善案登り木や棚の隙間を尾や指が入らない幅にし、角は面取りする。尾の変形・腫れ・垂れは当日受診と手順書に明記する。負傷個体は回復まで登り木を外し、低い環境で安静にする手順を定める。
Q43ビニール袋を噛みちぎって食べた中毒・誤飲
5月の夜、餌を入れたビニール袋をケージ内に置き忘れた翌朝、袋が半分なくなっていた。個体は昨夜まで食べていたが、今朝から嘔吐を2回し、便が出ていない。腹を触らせず、寝箱で丸くなっている。袋の切れ端はケージの中に散らばっており、残りの便には破片が見当たらない。
最も適切な対応はどれか
- ビニールは便と一緒に出るので、便が出るまで数日待つ
- 食用油を飲ませて腸を滑らせ、出てくるのを待つ
- 嘔吐と排便停止は腸閉塞の疑いなので、食べた物と時刻を記録し当日中に受診する
- 腹をマッサージして腸を動かす
正解C.嘔吐と排便停止は腸閉塞の疑いなので、食べた物と時刻を記録し当日中に受診する
解説ビニールの誤飲後の嘔吐と排便停止は腸閉塞のサインで、放置すると腸が壊死し命に関わる。食べた物の種類・量・時刻を記録し、当日中に受診して画像検査と処置を受ける。嘔吐が続くなら即受診に切り替える。便と一緒に出るのを数日待つのは閉塞を進める。食用油は誤嚥性肺炎を起こし、閉塞は解消しない。腹のマッサージは閉塞部の損傷と咬傷を招く。
課題ビニール袋をケージ内に置き忘れた管理ミスが原因で、何でも噛みちぎって飲み込む習性を考慮した持ち込み物の点検がなかった。嘔吐と排便停止を腸閉塞のサインとして捉える知識が不足していた。
改善案ケージ内に持ち込む物は退室前に指差し確認し、ビニール・ひも・釘類は持ち込まない。餌は陶器皿で給餌し、袋はケージ外で開ける。嘔吐と排便停止は当日受診、嘔吐が続けば即受診と手順書に明記する。
Q44施設の捕獲器に野生個体がかかった事故
9月の朝、施設の裏手に置いていた捕獲器に野生のハクビシンがかかっていた。捕獲器は以前の逸走対応で使った物をそのまま放置していた。個体は元気で、鼻先を金網にこすりつけて出血している。施設は現在、捕獲の許可を受けていない。
最も適切な対応はどれか
- 健康そうなので施設で飼養し、新しい仲間として受け入れる
- 収容してから後日まとめて都道府県に報告する
- 捕獲器ごと山まで運んで放し、記録も残さない
- 捕獲器に布をかけて落ち着かせ、直ちに都道府県に連絡して指示を仰ぎ、捕獲器は以後撤去する
正解D.捕獲器に布をかけて落ち着かせ、直ちに都道府県に連絡して指示を仰ぎ、捕獲器は以後撤去する
解説捕獲の許可がない状態で野生個体を捕らえたことは鳥獣保護管理法上問題で、まず都道府県に直ちに連絡し、放獣や処置の指示を受ける。捕獲器に布をかけて視界を遮り、鼻先の出血を悪化させないようにする。施設で飼養すれば無許可の捕獲・飼養となり違法である。後日の報告や記録を残さない放獣は不適切で、鼻先の傷の状態も含めて指示を受ける必要がある。許可のない捕獲器の放置そのものが誤りで、以後は撤去する。
課題逸走対応で使用した捕獲器を許可期間が終わった後も放置し、意図しない捕獲を招いた。法規制の理解が曖昧で、許可の範囲と期間を管理する仕組みがなかった。
改善案捕獲器は使用後すぐ撤去し、保管場所と使用記録を管理する。許可の内容と期間を文書で管理し、全職員が確認できるようにする。意図しない捕獲が起きたら直ちに都道府県へ連絡という手順を掲示する。
Q45猛暑日に水皿が倒れていた環境・災害
8月の夕方、気温36℃の日の巡回で、ケージ内の軽いプラスチックの水皿が倒れて空になっていた。朝に給水してから8時間、個体は寝箱の中で口を開けて呼吸し、唾液が泡立っている。寝箱の中の温度計は34℃を示している。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- すぐに新鮮な水を複数置き、寝箱を日陰に移して風を送り、呼吸が落ち着かなければ動物病院に連絡する
- 水を補充したので、翌朝の巡回で確認すればよい
- 口を開けて無理に水を流し込む
- 冷蔵庫の氷水をバケツで頭からかける
正解A.すぐに新鮮な水を複数置き、寝箱を日陰に移して風を送り、呼吸が落ち着かなければ動物病院に連絡する
解説8時間の断水と34℃の寝箱、開口呼吸と泡立つ唾液は熱中症の始まりである。すぐに新鮮な水を複数置き、寝箱を日陰に移して扇風機で風を送り、体にぬるい水をかけて冷やし、呼吸が落ち着かなければ動物病院に連絡して受診する。翌朝まで放置すれば臓器障害に進む。口に無理に水を流せば誤嚥と咬傷を招く。氷水の急激な冷却はショックを起こし、適切な冷却方法ではない。
課題登って倒す習性があるのに軽いプラスチック皿を使い、夏に2か所以上という基準が守られていなかった。猛暑日に8時間も巡回がなく、寝箱の温度と飲水を確認する体制がなかった。
改善案水皿は床に固定した重い陶器にし、夏は2か所以上に置く。猛暑日は昼と午後の巡回を追加し、寝箱の温度と水の残量を記録する。寝箱は木製で日陰に置き、凍らせたボトルと日よけシートを用意する。
Q46人工哺育の幼獣が冷たく鳴かない病気
6月の早朝、母獣とはぐれて保護され人工哺育中の生後3週ほどの幼獣が、朝の授乳時に鳴かず体が冷たい。夜中の授乳を1回抜いていた。口を開けると歯茎が白く、わずかに動くが吸いつく力がない。箱の中の保温マットは夜間に電源が抜けていた。
最初に取るべき行動として最も適切なものはどれか
- 冷たいまま急いでミルクを飲ませる
- タオルで包んで穏やかに保温し、体が温まるまでミルクは与えず、動物病院に連絡して受診する
- ドライヤーの温風を当てながらミルクを口に流し込む
- 母獣がいないと育たないので、見つけた場所に戻す
正解B.タオルで包んで穏やかに保温し、体が温まるまでミルクは与えず、動物病院に連絡して受診する
解説低体温の幼獣はミルクを消化できず、冷えたまま与えると吐いて誤嚥し、腸の動きが止まる。まずタオルで包み、穏やかに体を温めてから、動物病院に連絡して受診し、獣医師の指示で栄養を補う。授乳を抜いた上に保温が切れており、低血糖と低体温が重なっている可能性が高い。ドライヤーの温風は幼獣の皮膚を火傷させる。発見場所に戻しても母獣が戻る保証はなく、衰弱した幼獣は死亡する。
課題保温マットの電源が夜間に抜けていたことに気づかず、授乳も1回抜いていた。人工哺育は体温と授乳間隔の管理が命綱であるのに、夜間の確認体制がなかった。
改善案保温器具は電源の抜けにくい配線にし、箱内に温度計を置いて授乳ごとに記録する。授乳間隔は獣医師の指導に従い、抜かない体制を職員間で組む。幼獣が鳴かない・冷たい・吸わない場合は保温と受診を最優先とする手順を掲示する。
Q47保定中に腕を深くひっかかれた怪我
3月の午後、獣医師の往診で個体を保定中、半袖の職員が後ろ足で腕を深くひっかかれた。傷は3本の線で、血がにじんでいる。職員は「咬まれていないから大丈夫」と作業を続けようとしている。ハクビシンの爪には糞と土が付いていた。
最も適切な対応はどれか
- 咬み傷ではないので絆創膏で済ませ、作業を続ける
- 唾液をつけて傷をなめ、自然治癒を待つ
- 流水と石けんで洗い、作業を交代して当日中に受診し、破傷風の接種歴を確認する
- 個体を叱ってから傷に消毒液をかけて作業を続ける
正解C.流水と石けんで洗い、作業を交代して当日中に受診し、破傷風の接種歴を確認する
解説糞と土のついた爪によるひっかき傷は、咬傷と同様に細菌感染や破傷風の危険があり、SARS関連コロナウイルスなど人獣共通感染症の曝露にもなる。流水と石けんで十分に洗い、作業を交代して当日中に受診し、破傷風の予防接種歴を確認する。絆創膏だけで続ければ深部の感染を見逃す。傷をなめるのは口腔の細菌を加えるだけである。個体を叱る行為は無意味で、恐怖から攻撃性が増す。
課題保定作業を半袖で行い、防護の基本が守られていなかった。ひっかき傷を咬傷より軽視する認識があり、爪に付いた糞や土からの感染リスクを考慮していなかった。
改善案保定は長袖・革手袋・必要に応じて腕カバーを着用し、半袖での作業を禁止する。ひっかき傷も咬傷と同じく洗浄と当日受診を手順書に明記する。職員の破傷風接種歴を把握し、往診時は保定役と記録役を分けて負傷時に交代できる体制にする。
Q48心肺蘇生を始めたが胸の押し方が分からない救命救急
1月の夜、搬送中の車内で衰弱した成獣の呼吸が止まり、箱を叩いても反応がなく歯茎が紫になった。同乗者が運転し、職員は革手袋を着けて後部座席で個体を取り出した。病院まであと15分。職員は蘇生の経験がなく、どこをどう押すか迷っている。
心肺蘇生の方法として最も適切なものはどれか
- 個体を仰向けにし、腹を両手で強く押して空気を出す
- 背中を強く叩いて刺激を与え、動くまで繰り返す
- 口に直接口をつけて勢いよく息を吹き込み、圧迫はしない
- 横に寝かせ首を伸ばして口鼻を拭き、肋骨の後ろ胸の側面を片手で1分100回圧迫し30回ごとに布越しに鼻から2回送気する
正解D.横に寝かせ首を伸ばして口鼻を拭き、肋骨の後ろ胸の側面を片手で1分100回圧迫し30回ごとに布越しに鼻から2回送気する
解説ハクビシンの心肺蘇生は、横に寝かせて首を伸ばし、口鼻の分泌物を拭いて気道を確保し、肋骨の後ろ胸の側面を片手で1分100回程度圧迫する。30回圧迫ごとに布越しに鼻から2回息を吹き込み、病院到着まで続ける。感染症のリスクがあるため口を直接つけない。仰向けで腹を押す方法は心臓を圧迫できず内臓を傷める。背中を叩く刺激は蘇生にならない。送気だけで圧迫しなければ血液が循環しない。
課題搬送中の急変を想定しておらず、心肺蘇生の手順を職員が事前に訓練していなかった。蘇生時の防護(手袋・布越しの送気)と圧迫位置の知識が共有されていなかった。
改善案心肺蘇生の手順(気道確保・側面圧迫・布越し送気)を写真付きで手順書と搬送セットに入れ、年1回訓練する。搬送時は2人体制とし、運転と処置の役割を事前に決める。到着前に病院へ電話し、心肺停止の可能性を伝えて受け入れ準備を依頼する。
Q49掃除中に角へ追い詰めてしまった事故
7月の朝、寝箱の交換のため職員がケージ内に入り、個体が隅に逃げた。職員が近づくと個体は背中を丸め、歯をむいてシャーと威嚇し、逃げ場がない。職員は寝箱を持ったまま個体との距離が1mしかなく、後ろにいる同僚が「早く捕まえて」と急かしている。
最も適切な行動はどれか
- 素早く寝箱をかぶせて押さえ込み、作業を終わらせる
- ゆっくり後退して逃げ道を作り、ケージから出て個体が寝箱に戻ってから作業を再開する
- 大声を出して威嚇し返し、隅から追い出す
- 手を差し出して匂いを嗅がせ、落ち着かせてから捕まえる
正解B.ゆっくり後退して逃げ道を作り、ケージから出て個体が寝箱に戻ってから作業を再開する
解説逃げ場を失った個体の威嚇は、次の瞬間に飛びかかって咬む予兆である。ゆっくり後退して逃げ道を作り、ケージを出て個体が寝箱に戻るのを待ってから作業を再開するのが最も安全で、個体のストレスも最小になる。寝箱をかぶせて押さえ込めば個体が暴れて負傷し、職員も咬まれる。大声は興奮を増し攻撃を引き出す。野生動物に手を差し出す行為は咬傷の典型的な原因である。
課題個体がケージ内にいる状態で人が入る作業手順で、追い詰める構造になっていた。同僚が急かすことで危険な判断を誘発し、野生動物の威嚇サインを理解していない職員もいた。
改善案掃除は個体を寝箱に入れて仕切りで区切るか、二重構造のケージで個体のいない側から行う。威嚇サイン(背中を丸める・歯をむく・シャー)が出たら作業中止と手順書に明記する。急かさず安全を優先する文化を職員間で共有する。
Q50病院に着いたが何を伝えればいいか救命救急
10月の夜、3日前から食欲が落ち今日ぐったりした飼養個体を夜間救急に運んだ。受付で「どんな動物で、何を飼養許可で、いつから、何を食べていたか」と聞かれたが、職員は慌てて持ち物も記録も持ってこなかった。個体はキャリーの中で動かない。
受付で伝えるべき情報として最も適切なものはどれか
- 「ハクビシンです」とだけ伝え、あとは獣医師に任せる
- 許可証の写しと保護日時、体重と食事量の変化、便と皮膚の写真、他動物との接触の有無を伝え、記録を取りに戻る手配をする
- 「野生から拾った」と伝え、許可のことは聞かれるまで言わない
- ネットで調べた病名を伝え、その治療を頼む
正解B.許可証の写しと保護日時、体重と食事量の変化、便と皮膚の写真、他動物との接触の有無を伝え、記録を取りに戻る手配をする
解説ハクビシンは咬傷と人獣共通感染症の危険があり、獣医師が安全に診るには種名と飼養許可の有無、保護日時と場所、体重と食事量の変化、便と皮膚の状態、他動物との接触の有無が必要である。許可証の写しは法的に飼養していることの証明で、受け入れの判断にも関わる。種名だけでは経過が分からず診断が遅れる。許可を隠せば信頼を失い、記録を伝えないことで治療の機会を逃す。ネットの病名を押しつければ誤診の原因になる。
課題3日前から食欲低下がありながら記録と持ち物を準備しておらず、受診時に伝えるべき情報が職員の頭に入っていなかった。「受診時に伝える情報・持ち物」をセットにして常備する体制がなかった。
改善案キャリーの横に許可証の写し・記録ノート・便と皮膚の写真を入れた受診ファイルを常備し、搬送時に必ず持つ。日々の記録(食事量・体重・便・皮膚)を定型用紙にまとめ、食欲低下が2日続いたら受診と基準化する。夜間救急へは出発前に電話して状況を伝える。

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