基本情報
- 寿命
- 10〜15年(ヒツジは10〜12年)
- 体重
- 20〜40kg(シバヤギ・ピグミーゴート)
- 性格
- 好奇心旺盛で群れを好む。単独では強い不安
- 飼育難易度
- 高(土地・法的届出・毎日の世話)
- 法規制
- 家畜伝染病予防法で飼養者の定期報告が義務
- 最重要ポイント
- 2頭以上で飼い、鼓脹症と毒草に注意
生態と特徴
- 体の特徴
- 4つの胃をもつ反すう動物。ヤギは瞳孔が横長、角と蹄が伸び続け、ヒツジは毛が伸び続ける
- 原産地・分布
- 西アジア原産の家畜。シバヤギは長崎県などで改良
- 野生での生息環境
- ヤギは乾燥した岩場や山地、ヒツジは草原に適応
- 活動時間・睡眠
- 昼行性。日中は採食と反すうを繰り返し夜は休む
- 社会性・人との関係
- 群れで暮らす。1頭飼いは強いストレスで鳴き続ける
特徴的な行動・習性
- ヤギは高い所に登り、柵の隙間を探して脱柵する
- ヤギは草より木の葉や低木を好み、ヒツジは地際の草を食べる
- ヒツジは追われると群れで一方向に走り、1頭が離れるとパニック
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
鼓脹症(ガス腹)
予兆左腹部が太鼓のように張る、よだれ、立てない、苦しそうに呼吸。食後数時間で急変
予防濡れた生草やマメ科の青草、穀物の大量給与を避ける。乾草を主体に少量ずつ
尿路結石
予兆去勢オスに多い。排尿姿勢を繰り返すのに尿が出ない、鳴く、腹を蹴る、尿道口の結晶
予防穀物・濃厚飼料を控え乾草主体に。水は常に新鮮に。早すぎる去勢を避ける
腐蹄症
予兆跛行、蹄の間が赤く腫れ悪臭、膝をついて食べる
予防泥濘を避け床を乾燥させる。2〜3か月ごとの削蹄。雨季は蹄の間を毎週点検
内部寄生虫症
予兆下まぶたの裏が白い(貧血)、下あごのむくみ、下痢、やせ、毛づやの悪化
予防定期的な糞便検査と駆虫。放牧地の糞の除去。密飼いを避ける
腸性毒血症
予兆急に元気がなくなり、けいれん、下痢、数時間で死亡。穀物の食べ過ぎ後
予防穀物の急な増量をしない。飼料庫に鍵。ワクチンについて獣医師に相談
ヒツジの熱中症
予兆口を開けて速い呼吸、よだれ、ふらつき、横たわる。毛刈り前の梅雨〜夏に多い
予防初夏までに毛刈り。日陰と風通しを確保。日中の移動や追い込みをしない
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
左腹が太鼓状に張る
餌を全て下げ、無理に横にせず立たせて歩かせる。改善しなければ1時間以内に獣医師へ。針で刺さない
尿が出ず苦しむ
去勢オスなら緊急。餌を下げ、排尿の有無を時間ごとに記録しすぐ受診。腹を押さない、水を無理に飲ませない
下痢が続く・貧血
便を採取して受診。穀物を止め乾草と水のみに。子ヤギ・子ヒツジは脱水が早いので当日中に受診
急に倒れてけいれん
周囲の物をどけて頭を保護し、口に手を入れない。毒草・穀物の食べ過ぎがないか確認しすぐ獣医師へ連絡
起こりやすい怪我と予防・応急処置
角の折れ・出血
予防柵の隙間や網に角が挟まらない構造に。角同士の争いが激しければ分ける
応急処置清潔なガーゼで根元を圧迫し止血。折れた角は外さない。出血が止まらなければ当日受診
脚の骨折・脱臼
予防柵の隙間・床の穴をなくす。高所から飛び降りる構造を作らない
応急処置動かさず狭い囲いで安静。添え木は自己判断でせず、痛みで暴れるなら無理をせず獣医師へ
柵・網への絡まり
予防角のあるヤギにネット柵を使わない。首輪は引っ掛かりやすいので放牧時は外す
応急処置落ち着いて絡まった部分から切る。長時間吊られた脚は腫れるので冷やし、歩けなければ受診
犬の咬傷
予防外周を犬が入れない柵に。夜間は獣舎に収容。散歩中の犬に近づけない
応急処置傷を流水で洗い圧迫止血。毛で傷が隠れるので全身を触って確認。咬傷は必ず当日受診
動物由来感染症(人にうつる病気)
Q熱
感染経路出産時の胎盤・羊水、乾いた糞尿の粉じん吸入
予防出産や流産の処理は手袋とマスク。妊婦は出産介助をしない。胎盤は密封処分
伝染性膿疱性皮膚炎
感染経路口の周りのかさぶたへの接触(オルフ)
予防口唇のかさぶたがある個体を触ったら手洗い。手に傷があれば手袋
クリプトスポリジウム
感染経路子ヤギ・子ヒツジの下痢便の経口摂取
予防下痢の子を触った後は石けんで手洗い。幼児・高齢者は下痢便に触れさせない
皮膚糸状菌症
感染経路脱毛部位への接触、ブラシ共用
予防円形の脱毛がある個体は手袋で扱い、用具を共用しない。人の皮膚に輪ができれば受診
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 乾草(チモシー等)を常時食べ放題で与える
- 穀物・ペレットは必要な場合のみ少量、急に増やさない
- 鉱塩(ミネラル塩)を自由に舐められるように
水
- 常に清潔な水を複数の容器で。夏は1頭10L以上飲む
- 冬は凍らないよう朝夕交換。汚れた水は結石の原因
与えてはいけないもの
- ツツジ・シャクナゲ・アセビ・イチイ(毒草、少量で致死)
- 濡れた青草・マメ科の生草の大量給与(鼓脹症)
- 銅を多く含む牛・豚用飼料(ヒツジは銅中毒になる)
おもちゃ・遊び
- 登って遊べる台や丸太、ケーブルドラム
- 乾草を吊るすネット(ゆっくり食べられる)
- ブラシ・木の幹など体をこすれる柱
巣・寝床・隠れ家
- 雨風を防げる三方を囲った獣舎。1頭あたり2畳以上
- 床は地面より高く、乾いた敷料を厚く敷く
床材・トイレ
- 敷料はワラ・おがくず。濡れたら毎日交換
- 糞は毎日除去、寄生虫予防のため堆肥場は離す
- 蹄のため獣舎前に砂利・コンクリートの乾いた場所
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
高さ1.2m以上の木柵・金属柵。網は角が絡むため避ける
大きさ・広さ
2頭で放牧地100㎡以上、獣舎は1頭2畳以上
配置・レイアウト
- 獣舎・日陰・水場・鉱塩を離して配置し運動を促す
- 飼料庫は柵の外、鍵をかける(盗み食い防止)
- 毒草(ツツジ類)を柵の内外から完全に除去
設置場所の注意
- 鳴き声・臭いで苦情が出るので近隣に事前説明
- 柵の下に隙間を作らない。ヤギは登る場所を柵から離す
運動・部屋んぽ・散歩
- 放牧地で1日数時間は自由に歩かせ採食させる
- 散歩は首輪でなくハーネス、ツツジの植え込みに注意
- ヒツジは追い立てず、群れごとゆっくり移動させる
温湿度管理
適温10〜25℃が快適。ヒツジは25℃以上で熱中症リスク
適湿度乾燥した環境を好む。多湿は腐蹄症・寄生虫の原因
夏・冬の対策
- 夏:毛刈り、日陰と風、冷たい水を複数か所に
- 冬:風を防ぐ獣舎と乾いた厚い敷料。水の凍結防止
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
削蹄を2〜3か月ごとに。蹄鋏で伸びた壁を削り、出血させたら圧迫し乾いた場所で安静
ブラッシング・皮膚被毛ケア
ヤギは週1回ブラッシング。ヒツジは年1回春〜初夏に毛刈り、慣れないうちは専門家に依頼
その他のケア
角の根元・耳・蹄の間を週1回点検。オスは発情期に尿をかけるので臭いが強い
外敵からの保護
- 野犬・イノシシ・クマ対策に夜間は獣舎へ収容
- カラスは出産直後の子や弱った個体を狙う
- 蚊・アブ・ダニは獣舎の防虫と定期的な体の点検で対処
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
ビニール・ひも・ペンキ・肥料・タバコを柵内に置かない。食べたら量と時刻を記録し獣医師へ。無理に吐かせない
踏みつけ
子ヤギ・子ヒツジは親や他個体に踏まれる。出産後は別房に。車・トラクターの出入り口に動物を入れない
挟まれ
柵の隙間や扉に頭・角が挟まる。頭が抜けない時は角を回して外し、頸を無理に引かない。扉は固定して開閉
落下・転落
ヤギは高所から飛び降りて脚を痛める。1m以上の台は作らない。落下後に跛行や立てない時は当日受診
逸走・脱走
脱柵は交通事故と毒草の危険。柵は毎日点検。逃げたら追わず餌で誘導し、警察と近隣に連絡。首輪に連絡先
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 角や頭を叩く、首を強く引く
- 頭突きに対して正面から押し返す
安全な引き離しの手順
- ヤギの噛みつきは稀。頭突きは横に避けて視線を外す
- 服や髪を噛まれたら引っ張らず、口の横から指を入れる
- 興奮が収まるまで柵の外に出て距離をとる
- オスの頭突きは繰り返す。去勢と群れの見直しを相談
引き離した後の処置
頭突きで転倒したら打撲・骨折を確認。傷は流水で洗い、腫れや痛みが増せば受診
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 左腹が張って立てない・呼吸が苦しい
- 尿が出ず苦しがる(去勢オス)
- 毒草を食べた、けいれん、横たわり起きない
- 出産が1時間以上進まない・子が見えて動かない
当日中に受診
- 急に食べない・反すうしない
- 跛行や蹄の悪臭、立ち上がれない
- 下痢・貧血・あごの下のむくみ
受診時に伝えること・持ち物
品種・年齢・去勢の有無、食べた物と時刻、便と尿の状態、写真。大動物を診る獣医師を事前に探す
意識・呼吸・心拍の確認
- 呼びかけと耳への刺激に反応するか、まぶたの反射を確認
- 呼吸は脇腹の動きで数える。正常は毎分12〜30回
- 心拍は左胸の肘の後ろで触れる。正常は毎分70〜90回
蘇生の手順
- 右側を下にして横たえ、口と鼻の異物を除く
- 左胸の肘の後ろを両手で、毎分80〜100回押す
- 鼻に口を当てて3〜5秒に1回息を吹き込む
- 成獣は困難。獣医師に電話し指示を受けながら続ける
止血
- 清潔な布で5分以上強く圧迫する
- 蹄・角の出血は根元を圧迫し乾いた場所で安静
- 脚は心臓より高くせず、止血帯は使わない
搬送方法
- トラック・バンに敷料を敷き、立てなければ伏せさせる
- 搬送中も保温と換気。鼓脹症は横にせず伏臥位で運ぶ
ケースメソッドで学ぶ
