基本情報
- 寿命
- 成体で数か月〜1年。ポリプは適切に管理すれば数年
- 体重
- 傘径ミズクラゲ5〜30cm、タコ・サカサ5〜15cm
- 性格
- 無脊椎動物で学習はしない。刺胞を持ち、触れば刺す
- 飼育難易度
- 高(専用水槽・毎日の給餌・水質維持が必須)
- 法規制
- 動物愛護法の愛護動物外。採集は漁業権・海岸規制に注意
- 最重要ポイント
- 気泡・吸い込み・強い水流が傘を壊す。専用水槽で飼う
生態と特徴
- 体の特徴
- 体の95%以上が水。脳や心臓はなく神経網と傘縁の平衡胞で姿勢を保つ。触手に刺胞
- 原産地・分布
- ミズクラゲは日本全沿岸、タコ・サカサクラゲは沖縄など熱帯の浅海
- 野生での生息環境
- ミズクラゲは内湾の表層。サカサクラゲはマングローブや砂泥底
- 活動時間・睡眠
- 昼夜の区別はなく拍動を続ける。褐虫藻を持つ種は光を要する
- 社会性・人との関係
- 群れは作るが社会性はない。人は刺されるので手で触れない
特徴的な行動・習性
- 傘を拍動させて泳ぐが流れに逆らえず、水流の設計がすべて
- サカサクラゲは底で逆さに付着し褐虫藻で光合成する
- ポリプ世代があり、水槽壁にポリプが付着して増えることがある
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
傘の反転(裏返り)
予兆傘が内側に反り返り泳げず底に沈む。比重や水流の急変、温度ショック後に起きやすい
予防換水は比重・水温を合わせ少量ずつ。比重計で毎週確認。水流は傘が緩く回る程度
萎縮(餌不足)
予兆傘が小さく縮み口腕が短くなる、拍動が弱い、透明感が増す。給餌不足や水質悪化で進む
予防孵化直後のブラインシュリンプを毎日1〜2回。胃腔がオレンジに染まる量が目安
アンモニア中毒
予兆拍動が止まりがちで水面や底に漂う、傘縁がほつれる。給餌後の食べ残しや濾過不足が原因
予防アンモニア・亜硝酸は常にゼロ。給餌30分後に残餌を吸い出し、週10〜20%換水
白化(褐虫藻喪失)
予兆タコ・サカサクラゲの色が抜けて白くなり縮む。高水温・光不足・水質悪化が引き金
予防水温を25〜28℃に保ち、フルスペクトルLEDを1日8〜10時間。急な照明変更をしない
傘縁の溶け・欠け
予兆傘の縁がギザギザに欠けたり白濁して溶け出す。細菌増殖や水質悪化、擦れで起きる
予防底や吸い込み口に当たらない水流にする。水槽内の壁面のぬめりをこまめに除去
ストロビレーション
予兆病気ではないが水槽壁のポリプが幼クラゲを放出し、過密で急に水質が崩れる
予防壁面のポリプを定期的に掃除。増えた幼クラゲは別容器へ移すか飼育数を管理
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
傘が裏返った
比重と水温を即測定し、ずれていれば数時間かけて戻す。水流を弱め、強制的に手で戻さない。改善なければ受診
日に日に縮む
給餌を1日2回に増やし、アンモニア・亜硝酸を検査。ゼロでなければ3割換水を2日連続で行い餌の濃度も見直す
拍動が止まる
アンモニア・水温・比重を即測定。異常なら同条件の新しい海水に静かに移す。エアレーションを水槽内に入れない
白化が始まった
水温を測り28℃超なら冷却ファンや保冷剤を水槽外側に当てて下げる。照明時間を確保し、給餌も続ける
起こりやすい怪我と予防・応急処置
気泡による傘の穴
予防エアストーンは水槽内に置かず濾過槽側で。注水時は気泡を立てず静かに。気泡は傘の下に溜まり穴を開ける
応急処置傘の下の気泡は水流を一時止め、ピペットで静かに吸い取る。穴は良い水質なら数日で塞がるので水質維持に集中
吸い込み事故
予防吸水口は細かなメッシュで覆い、流量を傘が吸い付かない強さに。クラゲ専用の水槽構造を使う
応急処置ポンプを即停止し、水を流し込んで自然に剥がす。引っ張らない。傘が裂けても水質を保てば再生することが多い
傘の裂け・ちぎれ
予防網で掬わず、カップやボウルで水ごと移す。装飾やヒーターを水槽内に置かない
応急処置水質を最良に保ち、給餌は続ける。大きく欠けても口と胃腔が残れば回復の余地あり。流れを最弱にして安静
口腕・触手の欠損
予防他種混泳や過密を避ける。水槽内の器具の角を取り、擦れる場所を作らない
応急処置数日〜数週間で再生するので餌を届きやすい位置に流す。食べられていない個体はスポイトで口元へ給餌
動物由来感染症(人にうつる病気)
刺胞皮膚炎
感染経路触手や水槽の水への素手接触。サカサクラゲは粘液だけで刺す
予防手袋で作業し、刺されたら海水で洗い触手を剥がす。真水でこすらない
ビブリオ創傷感染
感染経路傷のある手で海水に触れる。手荒れ・切り傷から侵入
予防傷がある時は手袋。作業後に石けんで洗う。赤く腫れ熱が出たら受診
水槽肉芽腫
感染経路海水中の抗酸菌が皮膚の傷から入り、しこりになる
予防作業は手袋、終了後に手洗い。治らないしこりは皮膚科で水槽飼育を伝える
アレルギー・喘息
感染経路ブラインシュリンプ卵殻の粉塵や刺胞毒への感作
予防孵化容器はマスク着用で扱う。刺されて息苦しさや蕁麻疹が広がれば救急へ
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 孵化直後のブラインシュリンプを1日1〜2回、海水で洗ってから
- 成体にはクラゲ用冷凍・液体フードも可。胃腔が染まる量が適量
- 褐虫藻種も光だけでは不足。給餌は毎日必要
水
- 人工海水を比重1.021〜1.024、水温は種に合わせて安定
- 換水は週10〜20%。新水は水温・比重を合わせてから静かに注ぐ
与えてはいけないもの
- 海で採った生餌(寄生虫・刺胞動物を持ち込む)
- 魚用フレーク・顆粒(崩れて水質悪化)
- 銅を含む薬剤・添加剤(無脊椎動物に致死的)
おもちゃ・遊び
- 玩具は不要。流れに乗って緩く回ることが唯一の運動
- サカサクラゲには平らな底面と光が「遊び場」
- ライトアップは観賞用。明滅する光は避ける
巣・寝床・隠れ家
- 隠れ家は不要。角のない円形水槽が「巣」そのもの
- サカサクラゲは底に逆さに座るので砂泥か平らな底を
床材・トイレ
- ミズ・タコクラゲは底砂なし。砂が傘を傷つける
- サカサクラゲには細かい砂かベアタンク
- 装飾・流木・ライブロックは置かない
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
クラゲ専用クライゼル(円形)水槽。角のない透明アクリルかガラス
大きさ・広さ
傘径の3〜4倍の直径。ミズクラゲ3匹なら15〜20L以上
配置・レイアウト
- 吸水口はメッシュで覆い、水流は傘が中央で緩く回る強さ
- エアレーション・ヒーターは濾過槽側に置き、本水槽内には置かない
- 照明は褐虫藻種のみ必要。ミズクラゲは弱光で十分
設置場所の注意
- 直射日光の当たらない安定した温度の部屋に置く
- 振動の少ない場所。水槽を叩く・揺らすと傘が傷む
運動・部屋んぽ・散歩
- 散歩は不要。移動は水ごとカップで掬う
- 水流を1日数回確認し、全個体が流れに乗っているか見る
- ポンプ停止は30分以内。長時間止めると底に沈み傷つく
温湿度管理
適温ミズクラゲ15〜25℃、タコ・サカサクラゲ24〜28℃
適湿度湿度は不問。蒸発で比重が上がるので足し水は真水で
夏・冬の対策
- 夏:水温28℃超で白化・溶け。冷却ファンかクーラーを使う
- 冬:褐虫藻種はヒーター必須。ミズクラゲも急な低下を避ける
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
爪切りはない。代わりに比重・水温・アンモニアの測定を週1回以上行う
ブラッシング・皮膚被毛ケア
ブラッシングはない。代わりに壁面のぬめりとポリプをスクレーパーで除き水流を保つ
その他のケア
給餌後30分で残餌を吸い出す。孵化器やスポイトは毎回真水で洗い乾かす
外敵からの保護
- イソギンチャク・魚・エビとの混泳は不可。クラゲが食べられる
- 子どもや猫が水槽に手や前足を入れない配置に
- 種の違うクラゲ同士も互いに刺し合うので別水槽
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
クラゲ自身の誤飲はないが、水槽に落ちた砂や異物を胃腔に取り込むことがある。取り除けないなら触らず水質維持で自然排出を待つ
踏みつけ
床に落ちたクラゲは踏まれると潰れて戻らない。掬う時はカップで水ごと、作業は床にトレイを置いて行う
挟まれ
網・スポイト・吸水口のすき間に挟まると傘が裂ける。網は使わず、吸水口の隙間はメッシュで完全に覆う
落下・転落
カップから落ちた個体は真水に触れると数分で崩れる。床に落ちたらすぐ海水の容器に戻し、水道水で洗わない
逸走・脱走
脱走はないが、ポンプ排水で流出する事故がある。オーバーフロー口にメッシュを付け、換水時はホースの先を確認する
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 真水でこすり洗いしない(刺胞が一斉に発射する)
- 素手で触手を払わない。砂でこすらない
安全な引き離しの手順
- すぐに水槽から手を抜き、海水か人工海水で患部を流す
- 付着した触手はピンセットかカードの縁で剥がす
- 飼育3種に酢は無効なことが多い。ハブクラゲ用と考え、迷えば海水
- 剥がした後は40〜45℃の湯に20分浸けると痛みが和らぐ
引き離した後の処置
腫れが広がる、息苦しい、蕁麻疹が全身に出たら救急へ。かゆみが続けば皮膚科
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 飼育者が刺され呼吸困難・全身蕁麻疹
- 水槽全体でクラゲが一斉に沈み拍動停止
- アンモニア検出かつ傘が溶け始めている
- 水温30℃超または10℃以下に急変
当日中に受診
- 傘が裏返ったまま半日戻らない
- 傘に大きな裂けや吸い込み痕がある
- 1週間で傘径が3割以上縮んだ
受診時に伝えること・持ち物
水温・比重・アンモニア値・換水日・給餌内容・水槽の写真と動画。無脊椎動物対応の病院か水族館に相談
意識・呼吸・心拍の確認
- 拍動の有無:ミズクラゲは1分に30〜60回程度の規則的な拍動
- 姿勢:傘を上にして流れに乗っていれば正常
- 刺激反応:水流を軽く当て傘が収縮すれば生きている
蘇生の手順
- 心肺蘇生はない。代わりに水温・比重を合わせた新しい海水に移す
- エアレーションは別容器で行い、泡をクラゲに触れさせない
- 水流を最弱にして傘を上向きに静かに浮かせる
- 数時間拍動が戻らず傘が溶け始めたら回復は困難
止血
- 血液はない。裂け目から胃腔内容が出たら残餌と一緒に吸い出す
- 裂けた個体は別の清浄な海水容器に隔離し安静
- 水質を最良に保てば傘の裂けは数日で閉じる
搬送方法
- ジッパー袋か広口容器に飼育水を7割入れ、空気を残さず密閉
- 水温を保冷剤かカイロで外側から保ち、振動と光を避けて運ぶ
ケースメソッドで学ぶ
