小動物(哺乳類)

ムササビ

傷病個体の保護・許可飼養(鳥獣保護管理法)

最重要:拾ったらまず都道府県の鳥獣担当へ連絡する

基本情報

寿命
野生で数年。飼育下で10年以上の記録あり
体重
成獣700〜1500g。体長27〜49cm
性格
臆病で警戒心が強い。追い詰めると強く咬む
飼育難易度
高(許可必須・葉食・夜行性・咬傷)
法規制
鳥獣保護管理法で捕獲・飼養禁止。保護には許可
最重要ポイント
拾ったらまず都道府県の鳥獣担当へ連絡する

生態と特徴

体の特徴
前後肢の間に飛膜。尾は体長並みに長い。大きな目と鋭い切歯、切歯は一生伸び続ける
原産地・分布
日本固有種。本州・四国・九州の低山〜山地
野生での生息環境
大木のある森林や社寺林。樹洞や巣箱を巣にする
活動時間・睡眠
完全な夜行性。日没後に出巣し日中は樹洞で眠る
社会性・人との関係
基本は単独。繁殖期以外は縄張りを持ち人を避ける

特徴的な行動・習性

かかりやすい病気と予兆の見方・予防

代謝性骨疾患

予兆後肢のふらつき・骨の変形・骨折しやすい・成長不良。偏った餌で発症

予防多種の生葉と枝を中心に、カルシウムとビタミンD3を獣医師の指示で補う

切歯の過長・不正咬合

予兆よだれ・食べこぼし・口を気にする・体重減少。歯が伸び口を閉じにくい

予防硬い枝やどんぐりを毎日与え摩耗させる。歯の長さを週1回確認

幼獣の下痢・消化不良

予兆水様便・肛門周りの汚れ・腹部の張り・ぐったり。ミルクの濃度や急な切替で起こる

予防小動物用ミルクを適温で少量ずつ。牛乳は与えず、切替は数日かけて徐々に

誤嚥性肺炎

予兆授乳後にむせる・鼻からミルク・呼吸が速く雑音がある・口を開けて呼吸

予防仰向けで飲ませない。腹ばいの姿勢で流し込まず、自分で吸う量だけ与える

幼獣の低体温・低血糖

予兆体が冷たい・動きが鈍い・吸う力が弱い・けいれん。落下直後の幼獣に多い

予防保温を最優先。体が温まるまで授乳せず、温まってから糖液や薄めたミルクを少量

外部寄生虫・皮膚糸状菌症

予兆脱毛・フケ・かゆみ・マダニやノミの付着。野生由来個体はほぼ必ず持っている

予防保護直後に獣医師で駆虫。扱う時は手袋、隔離して他の動物と接触させない

病気の予兆チェックリスト

毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。

病気の応急処置

ぐったりして冷たい

タオルで包み、湯たんぽを横に置いて30分かけて温める。温まったら糖液を舌に数滴。当日中に受診

下痢が続く

ミルクを一段薄め、経口補水液を少量ずつ。便を写真に撮り翌日までに受診。血便・ぐったりなら即受診

授乳後にむせる

すぐ授乳を止め、腹ばいにして鼻口を拭く。呼吸が落ち着かない・ゼーゼーが続けば今すぐ受診

後肢がふらつく

高い場所に登らせず低いケージに移す。骨折の恐れがあるため抱き上げは最小限にし当日中に受診

起こりやすい怪我と予防・応急処置

落下による骨折・打撲

予防保護幼獣は低く柔らかい箱で管理する。成獣のケージは床に厚い寝床を敷く

応急処置触診せずタオルで包んで箱に入れ、暗く静かにして当日中に受診。頭を打ち反応が鈍ければ今すぐ

猫・犬による咬傷

予防保護した個体は犬猫のいない部屋で管理し、扉を閉める。野外では猫に襲われやすい

応急処置傷が小さくても必ず受診。内部で感染や損傷が進む。出血はガーゼで圧迫し保温して搬送

飛膜の裂傷

予防ケージの金網の角や針金の突起をなくす。爪が引っかかる布を使わない

応急処置出血部をガーゼで押さえ、膜を引っ張らない。放獣には滑空能力の回復が必須なので必ず受診

ネット・電線への絡まり

予防保護中は網戸やネット類に近づけない。野外では防鳥ネットが事故の原因になる

応急処置厚手手袋で頭を布で覆い、ネットははさみで切って外す。締め付け痕があれば受診

動物由来感染症(人にうつる病気)

咬傷による細菌感染

感染経路咬まれた傷・ひっかき傷から口内細菌が侵入

予防厚手の革手袋で扱う。咬まれたら流水で5分洗い、腫れれば人の病院へ

マダニ媒介感染症

感染経路体に付いたマダニが人に移り吸血する

予防保護直後に体を点検し駆虫。マダニは潰さず獣医師か医師が除去

皮膚糸状菌症

感染経路脱毛部や毛・フケとの接触で真菌が人の皮膚に

予防扱った後は手洗い。人に赤い輪状の発疹が出たら皮膚科へ

サルモネラ症

感染経路便や汚れた敷材に触れた手から口へ

予防掃除は手袋、食事前の手洗い。子どもや高齢者に触らせない

飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材

餌

  • 成獣は夜に生葉と枝を主食に、木の実や果実を少量
  • 幼獣は小動物用ミルクを数時間おきに腹ばいで授乳
  • 離乳は柔らかい葉・果実から始め、量は獣医師と相談

水

  • 給水ボトルと浅い皿の両方を置き毎日交換
  • 幼獣は授乳で水分を補い、皿の水は離乳後から

与えてはいけないもの

  • 牛乳・人用の粉ミルク・甘い飲料
  • ネギ類・チョコレート・アボカド・観葉植物
  • 農薬のかかった街路樹や除草剤散布地の葉

おもちゃ・遊び

  • 太い生枝を斜めに固定し登りと齧りに使う
  • どんぐりや松ぼっくりなど自然物を入れる
  • 高い位置に止まり木を渡し移動路を作る

巣・寝床・隠れ家

  • 木製の巣箱を最上部に設置し暗く保つ
  • 幼獣はフリースを敷いた箱と湯たんぽで保温

床材・トイレ

  • 巣箱に乾いた葉や細く裂いた紙を入れる
  • 床は新聞紙や広葉樹チップで糸状の布は避ける
  • 排泄場所は決まりやすいので毎日交換

飼養環境:ケージ・運動・温湿度

ケージ・ハウスの素材

金網の大型鳥かごか金属製の飼育室。木製は齧られる

大きさ・広さ

高さ2m以上の縦長が理想。幼獣は小箱から段階的に

配置・レイアウト

  • 最上段に巣箱、中段に止まり木と枝を立体的に
  • 床にも厚い寝床を敷き落下に備える
  • 餌と水は夜に取りやすい高い位置に置く

設置場所の注意

  • 日中は暗く静かな場所に置き人の出入りを減らす
  • 網目は幼獣の頭が通らない細かさを選ぶ

運動・部屋んぽ・散歩

  • 部屋に放さない。脱走と咬傷の両方の危険がある
  • 高さのあるケージ内で登り・滑空代わりの移動
  • 保護中の運動量は放獣までの回復目標として記録

温湿度管理

適温成獣は15〜25℃。幼獣は巣内を30℃前後に保温

適湿度50〜60%。乾燥しすぎると皮膚や飛膜が荒れる

夏・冬の対策

  • 夏は直射日光を避け風通し良く、28℃超は冷房
  • 冬は巣箱を厚く、ヒーターを外側に。急冷に注意

グルーミングと外敵からの保護

爪切り

爪は樹上生活用で鋭い。基本は枝で自然に削れる。伸びすぎは獣医師に依頼

ブラッシング・皮膚被毛ケア

ブラッシング不要。毛並みの乱れ・脱毛・マダニの有無を週1回点検する

その他のケア

歯の長さと口周りの汚れを週1回確認。飛膜の伸展と傷も合わせて見る

外敵からの保護

  • 犬・猫・フェレットと同じ部屋に置かない
  • 屋外に置かない。カラスやテン、猫に狙われる
  • 蚊・ハエの侵入を防ぎ傷口の汚染を避ける

飼養上の注意(事故防止)

異物誤飲

新聞紙の端や糸くずを食べることがある。糸状の布は使わず、食べ残しが減らないのに便が出なければ受診

踏みつけ

床に降りた個体は暗がりで見えにくい。夜に照明を点けてから歩き、扉を開ける前に居場所を確認する

挟まれ

扉の隙間や止まり木と壁の間に飛膜や尾が挟まる。可動部は幅を確認し、巣箱の蓋はゆっくり閉める

落下・転落

幼獣は巣箱から落ちて骨折する。低い箱で管理し、成獣のケージ床には厚い寝床を敷く。落下後に動かなければ受診

逸走・脱走

一度逃げると捕まえにくく夜に窓から出る。世話は扉を閉め切った部屋で。逃げたら暗くして餌を置き、鳥獣担当に連絡

噛みついた時の安全な引き離し方

やってはいけないこと

  • 引き抜く・振り払う。切歯で傷が裂ける
  • 叩く・大声を出す。恐怖でさらに強く咬む

安全な引き離しの手順

  1. 動きを止め、咬まれた手を動かさず数秒待つ
  2. タオルで顔を覆い暗くすると力が緩みやすい
  3. 緩んだ瞬間に手を引き、巣箱の方向に体を下ろす
  4. 離れたらケージを閉め、しばらく近づかない

引き離した後の処置

流水で5分洗い消毒。深い傷・腫れ・熱は人の病院へ。破傷風の接種歴を確認

救命救急マニュアル

今すぐ夜間救急へ(命に関わる)

  • 落下後に動かない・けいれん・意識がない
  • 口を開けて呼吸・鼻からミルクや血
  • 猫や犬に咬まれた・出血が止まらない
  • 幼獣が冷たく温めても反応しない

当日中に受診

  • 後肢を引きずる・登れない・足が変形
  • 丸1日食べない・便が出ない
  • 飛膜に傷・水様便が続く

受診時に伝えること・持ち物

保護した日時と場所、体重の推移、ミルクの種類と量、便の写真、許可証の有無

意識・呼吸・心拍の確認

  • 呼吸:胸の動きと鼻口の空気を確認する
  • 心拍:胸の左側に指を当て拍動を触れる
  • 体温:直腸温が35℃未満なら低体温

蘇生の手順

  1. 心停止は親指と指で胸を挟み毎分100回以上圧迫
  2. 呼吸停止は鼻と口を布で覆い軽く息を吹き込む
  3. 圧迫と呼吸を繰り返しながら搬送する
  4. 低体温ならまず保温。急激な加温はしない

止血

  • 清潔なガーゼで5分間押さえ続ける
  • 飛膜や尾の出血は付け根側を軽く圧迫
  • 止まらなければ押さえたまま搬送する

搬送方法

  • 暗い箱にタオルを敷き、湯たんぽは箱の外側に
  • 厚手手袋で扱い、揺らさず静かに車で搬送

ケースメソッドで学ぶ

ケースメソッド(状況予測シナリオ 50問)

ムササビに起こりうる病気・怪我・事故を想定した4択問題。解答・解説・課題と改善案付き。

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