基本情報
- 寿命
- 15〜20年(ラマも同程度)
- 体重
- アルパカ50〜80kg、ラマ100〜200kg
- 性格
- 臆病で穏やか。群れを好み単独飼育に向かない
- 飼育難易度
- 高(放牧地・毛刈り・群れ飼育・家畜獣医が必要)
- 法規制
- 家畜伝染病予防法の対象。飼養衛生管理基準の遵守義務
- 最重要ポイント
- 2頭以上で飼い、春の毛刈りを絶対に欠かさない
生態と特徴
- 体の特徴
- 体高約90cm。上の前歯がなく歯板で草を切る。三つの胃で反芻。足裏は柔らかいパッド
- 原産地・分布
- 南米アンデス高地(ペルー・ボリビア・チリ)
- 野生での生息環境
- 標高3500〜5000mの寒冷で乾燥した高原草地
- 活動時間・睡眠
- 昼行性。日中は採食と反芻を繰り返し夜は群れで伏せて休む
- 社会性・人との関係
- 群れで暮らす。序列があり単独では強いストレスを受ける
特徴的な行動・習性
- 決まった場所に排泄する習性があり掃除がしやすい
- 不快や序列争いで唾(胃内容物)を吐く。耳を倒すのが前兆
- 警戒時に甲高い警報音を出し、群れ全体が一斉に身構える
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
熱中症
予兆口を開けた速い呼吸、よだれ、ふらつき、伏せたまま立てない、体温上昇
予防春(5月まで)に必ず毛刈り。日陰と風通し、冷たい水を常備。日中の作業を避ける
髄膜虫症
予兆後肢のふらつき・麻痺、首の傾き、旋回、起立不能。秋〜冬に多い
予防シカ由来の線虫で、中間宿主はカタツムリ。放牧地の湿地を排水しシカの侵入を防ぐ
ビタミンD不足
予兆子の成長不良、前肢の湾曲、歩きたがらない、関節の腫れ。冬〜早春に多い
予防日照の少ない冬は獣医に相談しビタミンD補給。濃色毛の子は特に注意
胃虫・内部寄生虫
予兆痩せる、下痢、下まぶたの内側が白い(貧血)、毛艶の低下、あごの下のむくみ
予防定期的な糞便検査で駆虫時期を決める。放牧地のローテーションと糞の回収
歯の異常
予兆口からの食べこぼし、片側で噛む、あごの腫れ、口臭、食べているのに痩せる
予防年1回の歯のチェック。伸びすぎた切歯の整形は獣医に。あごの腫れは早期受診
コクシジウム症
予兆子の水様〜血の混じる下痢、元気消失、急な体重減少、脱水
予防密飼いを避け、糞尿のたまる場所を乾燥させる。子の下痢は早めに糞便検査
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
熱中症の疑い
すぐ日陰へ移し扇風機で風を送る。脚と腹に水をかけ続け、冷水を飲ませる。立てなければ即受診
後肢の麻痺
髄膜虫症の可能性。滑らない床の個室で転倒を防ぎ、水と餌を口元に。当日中に家畜獣医へ
下痢が続く
電解質入りの水を用意し、糞を採って獣医へ。子や血便・ぐったりは即受診
食べない・反芻なし
腹の張り、歯ぎしり、糞の量を確認。24時間食べない、腹が張るなら当日受診。胃捻転や中毒の可能性
起こりやすい怪我と予防・応急処置
骨折・脱臼
予防柵の隙間や溝をふさぐ。滑る土間にはゴムマット。犬に追わせない
応急処置動かさず静かな個室へ。添え木は無理にせず、群れの仲間を1頭そばに。当日受診
蹄・足裏の傷
予防2〜3か月ごとの蹄切り。ぬかるみを避け、放牧地のガラス・釘を回収
応急処置流水で洗い、出血は清潔な布で圧迫。跛行が続く、化膿、深い傷は受診
戦闘歯による咬傷
予防雄の戦闘歯(犬歯)は2〜3歳から獣医に切除依頼。雄同士の密飼いを避ける
応急処置耳・陰部の裂傷は圧迫止血し、傷を洗って獣医へ。耳の裂け、出血が止まらないなら当日受診
角膜の傷
予防牧草の硬い茎、トゲのある草や枝を放牧地から除く。目を床に近づけない給餌器
応急処置涙・まばたき・白濁があれば触らず暗い場所へ。目をこすらないよう注意し当日受診
動物由来感染症(人にうつる病気)
クリプトスポリジウム症
感染経路糞に汚染された手・水・器具からの経口感染
予防世話の後は石けんで手洗い。子の下痢時は手袋。器具を分けて熱湯消毒
皮膚糸状菌症
感染経路脱毛した皮膚や毛との直接接触
予防円形脱毛やフケを見たら触らず受診。作業後は手洗い・着替え
Q熱
感染経路出産時の胎盤・体液、乾いた糞尿の粉じん吸入
予防出産時は手袋・マスク。胎盤は密閉して処理し、小屋は湿らせて掃除
サルモネラ症
感染経路糞の経口感染、汚れた飼料や水
予防下痢の個体は隔離。餌・水を糞から離す。手洗いを徹底し、食事前は特に注意
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 乾草(チモシーなど低タンパクの牧草)を常時食べ放題に
- 放牧の草が主食。体重の1.5〜2%(乾物)が1日の目安
- ラクダ科用ミネラル(セレン・ビタミンD入り)を自由摂取
水
- 清潔な水を常時。夏は1頭1日10L以上飲む
- 冬は凍結防止。水を飲まないと胃の動きが落ちる
与えてはいけないもの
- 穀物・濃厚飼料の多給(鼓脹症・胃酸過多・肥満)
- アルファルファの多給、牛用ミネラル(銅過剰で中毒)
- アザレア・ツツジ・イチイ・シャクナゲなど有毒植物
おもちゃ・遊び
- 群れの仲間がいちばんの刺激。砂浴び場(乾いた砂地)
- 広い放牧地で走れる空間。小山や丸太の段差
- 夏はたらいの浅い水場(腹と脚を冷やして遊ぶ)
巣・寝床・隠れ家
- 三方を囲った小屋。風雨を避けつつ風通しがよい構造
- 小屋は群れ全員が同時に伏せられる広さに
床材・トイレ
- 小屋の床は乾いた藁またはおがくず。毎日糞を回収
- 排泄場所(共同トイレ)を決める習性。そこを集中的に掃除
- 夏は土間に打ち水をせず乾燥を保つ(蹄と寄生虫対策)
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
木製または金属パイプの柵、高さ1.2〜1.5m。小屋は木造
大きさ・広さ
放牧地は1頭あたり最低約500㎡。小屋は1頭2〜3㎡
配置・レイアウト
- 放牧地に日陰(木や屋根)を必ず複数箇所
- 小屋・水場・餌場を排泄場所から離す
- 病気や出産用に隔離できる個室スペースを確保
設置場所の注意
- 柵の隙間は頭が入らない幅に。有刺鉄線は使わない
- 犬・野犬が入れない柵。鍵付き扉で逸走防止
運動・部屋んぽ・散歩
- 日中は放牧地で自由に。群れで歩かせることが運動
- ハルター(頭絡)に慣らし、週に数回引き歩きで検診訓練
- 夏は早朝・夕方以外の引き歩きや移動を避ける
温湿度管理
適温適温5〜25℃。30℃以上は熱中症の危険、毛刈りが前提
適湿度乾燥を好む。高湿度は熱中症と皮膚病の原因、換気を重視
夏・冬の対策
- 夏:5月までに毛刈り、日陰・扇風機・冷水、腹を冷やす水場
- 冬:寒さには強いが風雨をしのぐ小屋。子は防寒着とビタミンD
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
蹄(爪)は2〜3か月ごとに蹄用ニッパーで切る。伸びると変形し跛行の原因
ブラッシング・皮膚被毛ケア
年1回春に毛刈り(専門業者)。毛玉と皮膚の湿疹を定期点検。全身は刈らず頭と脚を残す
その他のケア
歯は年1回確認。雄の戦闘歯は2〜3歳で切除。耳の中のダニも点検
外敵からの保護
- 野犬・飼い犬が最大の脅威。犬を放牧地に入れない
- カラスは子の目や出産直後を狙う。出産は小屋で
- カタツムリ・シカの侵入防止(髄膜虫)、蚊・アブ対策
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
ビニール・ひも・針金・釘を放牧地から回収。食べ物の袋を放置しない。食べない、よだれ、腹の張りは当日受診
踏みつけ
子(クリア)は群れの雄に蹴られたり踏まれることがある。出産後数日は親子を個室に。歩けなければ受診
挟まれ
柵の隙間に頭や脚が挟まる事故が多い。隙間は頭が入らない幅にする。挟まったら静かに外し、腫れや跛行は受診
落下・転落
溝や段差、濡れた土間で転倒し骨折や脱臼。溝は埋め、土間はゴムマット。立てない、脚が変形していれば動かさず受診
逸走・脱走
柵の扉を二重ロック。逃げたら追わず、仲間の個体を見せると戻る。道路に出たら警察へ。車や犬との接触に注意
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 殴る・叩く(恐怖で暴れさらに噛む・蹴る)
- 子に手で哺乳し人に過度に馴れさせる(バーサーク症候群)
安全な引き離しの手順
- まず落ち着き、正面に立たず横から静かに離れる
- 噛まれている部位を引かず、顔を手で軽くそらす
- 群れの他の個体がそばにいれば、その方向へ誘導する
- 唾吐きは耳を倒した時点で距離を取り、顔を背ける
引き離した後の処置
傷は流水で洗い、深い傷や腫れは人も受診。攻撃の原因(戦闘歯・雄の序列)を獣医に相談
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 口を開けて呼吸し立てない(熱中症)
- 腹が急に張り、歯ぎしりや転げ回る
- 出血が止まらない・骨が見える傷
- 難産(30分以上いきんで生まれない)
当日中に受診
- 後肢のふらつき・麻痺・首の傾き
- 24時間食べず反芻がない
- 子の下痢・ぐったり・乳を飲まない
受診時に伝えること・持ち物
体重、体温、発症時刻、糞の写真、最近の駆虫・毛刈り日、給餌内容、群れの他の個体の様子
意識・呼吸・心拍の確認
- 意識:名前を呼び耳が動くか。瞳孔の反応を確認
- 呼吸:正常は1分10〜30回。鼻先と胸の動きで数える
- 心拍:正常は1分60〜90回。左胸の後ろで触る
蘇生の手順
- 大型のため有効な胸部圧迫は困難。気道確保を優先
- 横に寝かせ首を伸ばし口の中の異物・唾を取り除く
- 舌を引き出し呼吸を確認。鼻を押さえた人工呼吸は獣医指示で
- すぐ家畜獣医に電話し、到着まで保温と安静を保つ
止血
- 清潔な布で5分以上強く圧迫し続ける
- 脚の出血は包帯でしっかり巻き、心臓より上に
- 止まらない場合は圧迫したまま獣医を呼ぶ
搬送方法
- 家畜獣医の往診が基本。搬送は伏せの姿勢で家畜車やトレーラー
- 群れの仲間を1頭同乗させるとパニックを防げる
ケースメソッドで学ぶ
