基本情報
- 寿命
- 4〜6年(飼育下でまれに7年以上)
- 体重
- 20〜35g(体長8〜10cm、尾は同じ長さ)
- 性格
- 臆病で俊敏。慣れても抱っこは苦手な個体が多い
- 飼育難易度
- 中〜高(脱走・温度管理・昆虫の給餌)
- 法規制
- 愛護法対象。ニホンヤマネは天然記念物で飼育不可
- 最重要ポイント
- 尾を絶対につかまない。15℃以下で擬似冬眠
生態と特徴
- 体の特徴
- ふさふさの尾でバランスを取る。大きな黒目と長い髭で暗闇を把握。尾の皮膚は抜けやすい
- 原産地・分布
- サハラ以南のアフリカ(東部〜南部)の森林や林縁に広く分布
- 野生での生息環境
- 樹上性。木の洞や岩の隙間、人家の屋根裏にも巣を作り、夜に枝を伝って餌を探す
- 活動時間・睡眠
- 完全な夜行性。昼は巣で丸まって眠り、暗くなると活発に跳び回る
- 社会性・人との関係
- 野生では単独〜小さな家族群。飼育下も同性の幼少期からなら同居可だが喧嘩に注意
特徴的な行動・習性
- つかまれると尾の皮膚がスポッと抜けて逃げる「尾抜け」の防御反応を持つ
- 寒さや餌不足で体温を下げて眠る擬似冬眠に入る。冬の保温が生死を分ける
- 数mmの隙間も抜け、垂直の壁も登る脱走名人。扉と蓋の施錠が必須
かかりやすい病気と予兆の見方・予防
擬似冬眠(低体温)
予兆体が冷たく丸まったまま動かない・呼吸がごく浅く遅い・触っても反応が鈍い
予防室温を常に20℃以上に保つ。夜間や留守中もヒーターを切らず、温度計で毎日確認する
下痢・腸炎
予兆軟便や水様便で尾の付け根が汚れる・食欲低下・体重減少。小さい体ですぐ脱水する
予防果物の与えすぎを避ける。食べ残しは毎日撤去し、床材と給水器を清潔に保つ
呼吸器感染症
予兆鼻水・くしゃみ・呼吸時にプチプチ音・目を細める・活動が減る
予防冬の急な冷え込みと隙間風を防ぐ。乾燥した床材を使い、ケージは換気のよい場所に
カルシウム不足
予兆後ろ足のふらつき・骨折しやすい・けいれん・背中が曲がる。昆虫偏重の食事で起こる
予防昆虫にはカルシウム剤をまぶす。ペレットを主食にし、昆虫や果物だけにしない
肥満・脂肪肝
予兆体重が標準を大きく超える・お腹がたるむ・動きが鈍い・突然食欲がなくなる
予防ミルワームやナッツは少量のご褒美に。月1回体重を量り、回し車で運動させる
腫瘍
予兆皮膚の下やお腹にしこり・徐々に大きくなる・片側だけ腫れる。高齢で増える
予防予防は難しい。週1回は体を観察し、しこりに気づいたら小さいうちに動物病院で相談する
病気の予兆チェックリスト
毎日1回チェック。1つでも当てはまれば早めに動物病院へ相談。
病気の応急処置
擬似冬眠で動かない
死んだと決めつけず、手やタオルで包み1時間かけてゆっくり温める。目覚めたら砂糖水を舐めさせ当日受診
下痢が続く
果物を止めてペレットのみに。砂糖水を少量ずつ飲ませ、便を写真に撮って当日受診。血便なら即受診
呼吸が苦しそう
温めて静かな暗い場所に置き、刺激しない。口を開けて呼吸していれば緊急。すぐ受診
けいれん・ふらつき
落下しないよう低い箱に移し、保温して暗く静かに。昆虫偏重なら伝えて当日中に受診
起こりやすい怪我と予防・応急処置
尾抜け
予防尾を持たない・つかまない。捕まえる時は両手で包むかカップに誘導する
応急処置むけた皮膚は戻らない。清潔なガーゼで軽く押さえて止血し、当日受診。壊死部は切除が必要
落下による骨折
予防高所に登らせたまま部屋んぽしない。ケージ内の高さ30cm以上には下に厚い床材を敷く
応急処置足を引きずる・動かさない時は触らず小箱に入れ、保温して当日受診。添え木は自分でしない
同居個体の咬傷
予防新しい個体の同居は慎重に。喧嘩したら即別居。発情期や餌不足で争いが増える
応急処置すぐ別ケージに分け、出血は清潔なガーゼで押さえる。傷が深い・腫れたら当日受診
爪の絡まり
予防タオル地やほつれた布を入れない。網目の粗いハンモックや金網の床を避ける
応急処置暴れさせず布ごと切り離す。指が腫れる・色が変わる時は血流障害なので当日受診
動物由来感染症(人にうつる病気)
サルモネラ症
感染経路糞便・ケージ内の物に触れた手から経口
予防掃除後は石けんで手洗い。ケージ用品を台所で洗わない。子どもや高齢者は特に注意
皮膚糸状菌症
感染経路脱毛やフケのある個体との直接接触
予防円形の脱毛を見たら受診。手袋で扱い、人に赤い輪状の発疹が出たら皮膚科へ
咬傷の細菌感染
感染経路咬まれた傷からパスツレラ菌などが侵入
予防咬まれたら流水で5分洗い消毒。腫れ・熱感が出たら受診。免疫が弱い人は注意
外部寄生虫(ダニ)
感染経路床材や個体に付いたダニが人の皮膚へ
予防新しい床材は密封保管。かゆみ・刺し跡があれば動物と人の両方を受診
飼養条件:餌・水・おもちゃ・巣・床材
餌
- 小動物用ペレットを主食に、夕方1回、体重の約10%を目安
- コオロギ・ミルワームなどの昆虫を週3〜4回、カルシウム剤をまぶす
- 果物・野菜・ゆで卵はごく少量、翌朝に残りを回収する
水
- 給水ボトルを毎日交換し、飲み口の詰まりを指で確認する
- ボトルに慣れない個体は浅く重い皿も併用し、毎日洗う
与えてはいけないもの
- チョコレート・ネギ類・アボカド・アルコール
- 野外で採った昆虫(農薬・寄生虫の危険)
- 味付けした人の食べ物・ナッツや種の与えすぎ
おもちゃ・遊び
- 直径15cm以上の継ぎ目のない回し車(足を挟む隙間がない物)
- 太さの違う枝・ロープ・コルク樹皮で登り道を作る
- 紙製トンネルや巣箱内に餌を隠して探させる
巣・寝床・隠れ家
- 木製や紙製の小さな巣箱を上部に設置し、中に紙の巣材を入れる
- 巣箱は複数置き、同居なら頭数より多く用意する
床材・トイレ
- 紙製床材や針葉樹以外の木製チップを3cm以上敷く
- 綿やタオル地は爪や足に絡むので使わない
- 床材は週1回全交換、汚れた所は毎日取り除く
飼養環境:ケージ・運動・温湿度
ケージ・ハウスの素材
ガラス・アクリル水槽に金網蓋、または目の細かい金網ケージ(隙間5mm以下)
大きさ・広さ
幅45×奥行30×高さ45cm以上。高さを優先し、複数飼育ならさらに広く
配置・レイアウト
- 上部に巣箱、中段に枝と回し車、下に餌皿と給水器を配置
- 高い所の真下は厚く床材を敷くか枝で落下を受け止める
- 蓋や扉はクリップやロックで固定し、隙間がないか毎回確認
設置場所の注意
- 直射日光・エアコンの風・隙間風が当たらない場所
- 夜に活動するので寝室から離し、テレビの近くは避ける
運動・部屋んぽ・散歩
- 部屋んぽは必須ではない。出すなら夜に、隙間を塞いだ狭い部屋で
- 家具の裏やコンセント、他のペットの立ち入りを完全に遮断する
- ケージ内の回し車と登り木で運動量は確保できる
温湿度管理
適温22〜28℃。15℃以下で擬似冬眠、30℃以上で熱中症の危険
適湿度40〜60%。結露するほどの多湿は避ける
夏・冬の対策
- 夏はエアコンで28℃以下に。閉め切った部屋での留守番は避ける
- 冬はパネルヒーターと保温カバーで20℃以上を維持し、温度計で確認
グルーミングと外敵からの保護
爪切り
通常は枝や石で自然に削れる。伸びすぎて布に引っかかる場合は動物病院で切ってもらう
ブラッシング・皮膚被毛ケア
ブラッシング不要。脱毛・フケ・かゆがる様子があればダニや皮膚病なので受診
その他のケア
尾の毛が薄い・先が黒い時は尾抜けや壊死の兆候。歯は硬い枝をかじらせて摩耗させる
外敵からの保護
- 猫・犬・フェレットは同じ部屋に入れない。扉を閉めても脱走時に襲われる
- 蚊・ハエ対策に網戸を点検し、夏は蚊帳やネットでケージを守る
- ベランダや窓際に置かず、カラスや蛇が入らない室内で飼う
飼養上の注意(事故防止)
異物誤飲
綿や糸くず、輪ゴム、小さなプラスチック片をかじって飲み込む。異物を疑い便が出ない・食欲が落ちたら当日受診
踏みつけ
床を走ると踏まれる。部屋んぽ中は家族に声をかけ、すり足で歩く。踏んでしまったら動けなくても触らず箱に入れて即受診
挟まれ
ドアや引き出しの隙間に入り込む。ケージの蓋を閉める時も指や尾を挟みやすい。挟んだ部位が腫れる・動かせないなら当日受診
落下・転落
高所からも跳ぶが、滑る床や机の端から落ちて骨折する。机の上や肩に乗せない。落下後に足を引きずれば当日受診
逸走・脱走
数mmの隙間から脱走する。逃げたら部屋を暗く静かにし、巣箱と餌を床に置いて待つ。他のペットは別室へ隔離
噛みついた時の安全な引き離し方
やってはいけないこと
- 手を振り払う・引き抜く(歯が折れ、個体が飛ばされて落下する)
- 尾をつかんで引き離す(尾抜けを起こす)
安全な引き離しの手順
- 痛くても動かず、そのまま手を床や台に近づける
- 空いた手で胴体を包み、床に足が着くようにする
- 離さない時は、鼻先に息を吹きかけるか、布を近づけて気をそらす
- 放したらそっとケージに戻し、しばらく刺激しない
引き離した後の処置
傷は流水で5分洗い消毒。小さな歯でも深い。腫れ・熱感・膿が出たら受診。糖尿病などの人は早めに
救命救急マニュアル
今すぐ夜間救急へ(命に関わる)
- 体が冷たく温めても目覚めない
- 口を開けて呼吸している・呼吸が止まりそう
- 高所から落ちて動かない・体が変形
- 尾抜けや咬傷で出血が止まらない
当日中に受診
- 丸1日何も食べていない・水様便
- 足を引きずる・動きが左右で違う
- 尾の皮膚がむけた・先が黒ずんだ
受診時に伝えること・持ち物
体重・温度計の記録・最近の食事内容(昆虫の頻度)・いつから異常か・便や患部の写真
意識・呼吸・心拍の確認
- 手のひらに乗せ、胸の上下で呼吸を確認。正常は1分に100回以上で速い
- 指先を胸の左側に当て、心拍の振動を感じる。正常は1分に300回以上
- 体温は手で触って冷たいか判断。冷たく動かなければ擬似冬眠を疑う
蘇生の手順
- まず温める。冷たい個体は体温が戻ると自力で呼吸と心拍が戻ることが多い
- 呼吸がなければ人差し指の腹で胸を1秒に2〜3回、軽く圧迫する
- 強く押すと肋骨が折れるので胸が1〜2mm沈む程度に留める
- 1分やって反応がなければ温めながら夜間救急へ向かう
止血
- 清潔なガーゼで患部を3〜5分、動かさずに押さえる
- 尾抜け部は皮膚が戻らないので巻き直さず、押さえて止血のみ
- 20〜30gの体では数滴でも大量出血。止まらなければ即受診
搬送方法
- 小さな箱や布製ポーチに巣材と一緒に入れ、暗くして運ぶ
- 使い捨てカイロは箱の外側に貼り、直接触れないよう保温する
ケースメソッドで学ぶ
